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青色申告とは

所得税においては、「青色申告」と言っても何か特別に青色のものがるというわけではありません。
一定の帳簿を備え付け、帳簿に日々の取引を記帳し、その記録にもとづいて、正しい所得金額や税額を計算し、確定申告をおこない納税することを「青色申告」といいます。
青色申告の方は、そうでない(白色申告の)方にはない多くの節税効果のある特典を使うことができます。
(ちなみに、法人税においては、「青色申告」であれば一番最初の申告書の紙(別表一)が青色です。)

青色申告承認申請書とは

『青色申告承認申請書』とは、青色申告による申告をしたいことを税務署に知らせるための届出書類で、正式名称は『『所得税の青色申告承認申請書』といいます。
なぜ頭に「所得税の」と付くかというと、所得税だけでなく法人税にも青色申告制度があるからです。
法人税の場合は『青色申告の承認申請書』といい、両者を区別するために書類名が異なっているのです。

「承認」申請書という名称になっていますが、申請書に不備や間違いがない限り税務署が却下することはありません。
また、「承認しましたよ」という特別な証明書をもらえることもありません。

この『青色申告承認申請書』を提出するには『開業届』の提出が必要となります。
コラム「開業届の書き方パーフェクトガイド」

青色申告にはメリットがいっぱいある!

青色申告には次のようなメリットがあります。

メリット①青色申告による特別控除(節税効果)を受けることができる

青色申告には2種類の特別控除があり、10万円控除と55万円控除(e-Tax による電子申告又は電子帳簿保存を行うと65万円控除)があります。
どちらの控除が使えるかは、正規の簿記の原則により記帳を行っているかどうかで決まります。
(注)令和元年までは65万円控除

メリット②青色事業専従者給与を経費計上することができる

配偶者などの親族が事業に従事している場合、事業主がこれらの人に給与を支払ったとしても、原則として経費にはなりません。
白色申告の場合、多く計上できたとしても、配偶者であれば86万円、配偶者でなければ専従者一人につき50万円が経費として認められる上限になります。
青色申告の場合、いくつか要件がありますが、労務の対価として相当であると認められる金額であれば、専従者給与を経費に計上することができます。

メリット③少額減価償却資産(30万円未満の資産)を経費計上することができる

『青色申告承認申請書』を提出しておらず白色申告者の方は、1個10万円未満の資産しか一度に経費計上することができません。
1個10万円~30万円の資産の資産については固定資産に計上し、耐用年数の期間にわたって、減価償却費として経費計上するしかありません。

個人事業において10万円~30万円の備品は結構あります。
最も代表的なものはパソコン・机・椅子です。
飲食店であれば、業務用冷蔵庫・厨房機器などがこれに該当することがあります。
美容室であれば、チェア・シャンプー台・美容機器などが該当することがあります。

メリット④純損失の繰越控除

事業を営んでいると、景気の浮き沈み・ヒット商品の開発・強力なライバルの出現などにより、業績が大きく上下します。
特に開業直後は、家賃や人件費等の固定費はかかる一方で売上見込みは少ないため、事業所得が赤字になることもあります。
このような場合、事業主を救済するため、他の所得(給与所得や不動産所得等)が黒字であれば、その黒字の所得と赤字の事業所得を相殺(損益通算)できるようになっています。
この「損益通算」は、青色申告とは関係なく適用できるものですので、白色申告の方でも適用を受けることができます。

上記の「損益通算」をしてもまだ赤字である(純損失がある)場合もあります。
このような場合、事業主を救済するため、この純損失を翌年以降3年間繰越せるようになっており、今年の赤字と翌年以降の黒字を相殺(純損失の繰越控除)できるようになっています。
この「純損失の繰越控除」を受けるためには、青色申告が必要になります。

青色申告承認申請書を入手する

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国税庁のホームページからダウンロードするか、最寄りの税務署の窓口に出向いて入手します。

青色申告承認申請書の書き方

まずは上の部分を、左上から右下の方へ順番に見ていきましょう。
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「税務署長」

管轄の税務署名を記載します。
まず自分の所轄の税務署がどこであるかが分からなくて最初からつまずかれる方も多いです。
個人事業主の場合、原則として自宅の住所地が納税地となり、その納税地を管轄する税務署になります。
税務署の管轄地域は複雑ですので、下記の国税庁のホームページにアクセスし自宅の郵便番号や住所を入力するのが最も早くて正確です。
https://www.nta.go.jp/about/organization/access/map.htm

「提出日」

提出年月日を記入します。郵送提出の場合は、ポストへの投函日を記入します。

「納税地」

個人事業主の場合、原則として自宅の住所地が納税地となり、その納税地を管轄する税務署になります。
そのため、この「納税地」欄には、原則として自宅の住所地を記載します。
ただし、居所地や事業所などの所在地を納税地とすることができる特例があります。
この納税地の特例を受けようとする人は、本来の納税地を所轄する税務署長に、納税地の特例を受けたい旨の届出書(「所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書」)を提出する必要があります。
この特例を受けた人は、「納税地」欄には居所地や所在地を記載します。

「上記以外の住所地・事業所等」

自宅の住所地と事業所が別であれば、事業所の所在地を記載します。
納税地の特例を受けた方は、自宅の住所を記載します。

「氏名・生年月日」

氏名・生年月日を記入します。
名前の横の㊞のマークがある部分には押印が必要です。
この押印は認印で問題ありません。

「職業」

営む事業の名称を簡潔に記載します。
明確な記載のルールはありませんが、総務省が公表している「日本標準職業分類」の業種名を参考にすればよいと言われています。
例えば、「飲食業」「美容業」「歯科診療所」「小売業」などです。
複数の職業がある場合は、メインの職業を1つ書いても複数書いてもどちらでも問題ありません。

コラム「【美容室】開業に成功する商圏分析」
コラム「【美容室】開業時の融資に成功する創業計画書の書き方とポイント」

「屋号」

屋号がある場合は記載します。
屋号名で銀行口座を開設されたい場合は、正確に記入しましょう。
銀行に『開業届』を提出する必要があります。
屋号を使わない方は空欄でも問題ありません。

次に中央部分を、上から順番に見ていきましょう。
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「令和〇〇年分」

青色申告を開始したい年を記入します。

所得税は暦年課税であり、その年1月1日から12月31日までの1年間の所得の合計額に対して課税されるため、法人のように自由に決算月を決めることはできません。

「1 事業所又は所得の基因 となる資産の名称及びその所在地」

屋号と事業所の住所を記入します。
屋号が無ければ空欄で問題ありません。
不動産賃貸業を営んでいる方であれば、「〇〇ビル」のように記入します。

事業所が2つある場合は、2つとも記入します。

「2 所得の種類」

不動産事業であれば不動産所得に〇を付けます。
山林事業であれば山林所得に〇を付けます。
それ以外の事業であれば(多くの場合がこれにあたると思います)事業所得に〇を付けます。

「3 いままでに青色申告承認の取消しを受けたこと又は取りやめをしたことの有無」

過去に青色申告承認の取消しを受けたり取りやめをしたことがあれば、「(1)有」に〇を付け、「取り消し」か「取りやめ」かに〇を付けるとともにその年月日を記入します。
今回が初めてであれば「(2)無」に〇を付けます。

「4 本年1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日」

1月15日以前に新たに業務を開始した場合、特に記入する必要はありません。
1月16日以後新たに業務を開始した場合、その開始した年月日を記入します。

「5 相続による事業承継の有無」

相続による事業承継があれば、「(1)有」に〇を付け、相続開始年月日を記入するとともに、被相続人の氏名を記入します。
そうでなければ(多くの場合がこれにあたると思います)「(2)無」に〇を付けます。

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「6 その他参考事項」

「その他参考事項」となっていますが、書き方に一番苦労するのがここの部分になります。

(1)簿記方式(青色申告のための簿記の方法のうち、該当するものを選択してください。)
青色申告には2種類の特別控除があり、10万円控除と55万円控除(e-Tax による電子申告又は電子帳簿保存を行うと65万円控除)があります。
どちらの控除が使えるかは、正規の簿記の原則により記帳を行っているかどうかで決まります。
正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳を行い貸借対照表を作成できるのであれば55万円控除が可能ですが、そうでなければ10万円控除となります。
もちろん10万円控除より55万円控除の方が有利で節税効果が大きくなります。

まとめると、以下のようになります。
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(注)令和元年までは65万円控除

55万円控除を選択したい方は、「複式簿記」に○を付けます。
10万円控除の方は、「簡易簿記」に〇を付けます。

最初に10万円控除で申請していたとしても、要件を満たして55万円控除で確定申告をしたいときは、55万円控除で『青色申告承認申請書』を再度提出する必要はないようです。

(2)備付帳簿名(青色申告のため備付ける帳簿名を選択してください。)
10万円控除の場合、帳簿の種類については行う業務の内容により異なりますが、一般的には、①現金出納帳・②売掛帳・③買掛帳・④経費帳・⑤固定資産台帳の5種類であるため、この5つに〇を付けます。

65万円控除の場合は、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳が必要になることから、それらに加え⑥総勘定元帳・⑦仕訳帳が必須になるのでこの2つにも〇を付けます。

「預金出納帳」「受取手形記入帳」「債権債務記入帳」「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」があればそれぞれ〇を付けます。

前々年の事業所得の金額及び不動産所得の金額(青色事業専従者給与の額を必要経費に算入しないで計算した額)の合計額が300万円以下の方は、現金主義によって計算することを選択して青色申告をすることができます。
その方は「現金式簡易簿記」による記帳となるのですが、その場合『所得税の青色申告承認申請(兼)現金主義の所得計算による旨の届出書』という書類を税務署に提出する必要があります。

(3)その他
その他特記事項があれば記入しますが、特に記入する必要はありません。

最後に一番下の部分です。
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「関与税理士」

関与税理士がいれば、この欄に記載します。
ただ、関与税理士がいてれば、この『開業届』は通常は税理士が書いて提出してくれると思います。

「税務署整理欄」

税務署整理欄なので記載する必要はありませんし、何も記載してはいけません。

青色申告承認申請書の提出枚数

『青色申告承認申請書』の提出枚数は1枚です。
ただし、『青色申告承認申請書』を書面で提出する場合で手元に控えが欲しい方は、2枚作成提出することにより、税務署の受付印を押してもらったものを1枚返してもらうことができます。
郵送提出で手元に控えが欲しい方は、切手を貼付した返信用封筒を入れておく必要があります。
これを忘れると手元に控えが返ってきません。

提出期限(開業の際に提出する場合)

令和2年1月1日~令和2年1月15日までに開業した場合・・・令和2年3月15日までに提出すれば令和2年分から青色申告が可能です。
令和2年1月16日~令和2年12月31日までに開業した場合・・・開業日から2ヵ月以内に提出すれば令和2年分から青色申告が可能です。

提出期限が土・日曜日・祝日等の場合は、その翌日が期限となります。
提出期限が遅れてしまうと、その年は白色申告となってしまい、翌年から青色申告となります。

提出期限(相続による事業承継の場合)

青色申告の承認を受けていた被相続人の事業を相続により承継した場合は、相続開始を開始した日によって提出期限が異なります。
相続を開始した日がその年の1月1日から8月31日までの場合・・・相続を開始した日から4か月以内
相続を開始した日がその年の9月1日から10月31日までの場合・・・その年の12月31日まで
相続を開始した日がその年の11月1日から12月31日までの場合・・・その年の翌年の2月15日まで

青色申告が取り消されるケース

次のような場合には、青色申告が取り消されることがあります
□ 帳簿書類を税務職員に提示しない場合
□ 税務署長の指示に従わない場合
□ 隠ぺい、仮装等がある場合

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