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財務デューデリジェンス(財務DD)によるM&Aのリスクマネジメントが成功のポイント。
大阪・東京の税理士法人MFMグループ(四大監査法人出身の公認会計士在籍)

デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスには次のような種類があります。
□ 財務デューデリジェンス(財務DD)
□ 法務デューデリジェンス(法務DD)
□ 税務デューデリジェンス(税務DD)
□ 人事労務デューデリジェンス(人事労務DD)
□ ITデューデリジェンス(ITDD)
□ 事業デューデリジェンス(事業DD)
□ 不動産デューデリジェンス(不動産DD)
□ 環境デューデリジェンス(環境DD)

デューデリジェンスを行うには国家資格が必要な場合があります。
何のデューデリジェンスに何の資格が必要なのかは、後ほどそれぞれ見ていきます。

財務デューデリジェンス(財務DD)

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出典:JICPA

財務デューデリジェンス(財務DD)とは、M&Aにおいて買収対象企業又は買収対象事業の適正な財務状態・収益性を把握するための手続であり、貸借対照表や損益計算といった財務諸表等を検討することにより行われます。
ファイナンシャルデューデリジェンスとも言われます。
M&Aにおいて最も一般的なデューデリジェンスであり、単にデューデリジェンスと呼ばれる場合は、この財務デューデリジェンスを意味していることが多くなっています。
M&Aの適正な買収価格を算定するためにも、特に重要なデューデリジェンスになります。

財務デューデリジェンス(財務DD)と資格との関係

一般的には、M&Aの財務デューデリジェンスは公認会計士が実施します。
ただし、必ずしも国家資格が必要ということではありません。
会計に詳しく財務諸表をしっかり分析できる方であれば、無資格者でも財務デューデリジェンスを実施することができます。

しかし注意しなけらばならないのは、財務デューデリジェンスと税務デューデリジェンスを同時に行う場合です。
後ほども触れますが、税務デューデリジェンスは税理士という国家資格が必要となるため、税理士以外は実施することができません。
そのため、中小企業のM&Aにおいては、税理士資格も持っている公認会計が、財務デューデリジェンスと税務デューデリジェンスを同時に行う場合が多くなっています。

財務デューデリジェンス(財務DD)の調査項目

公認会計士による会計監査を受けていない場合には、まずGAAP(一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)に準拠した財政状態・収益性を把握する必要があり、証憑突合等の手続が必要になります。
財務デューデリジェンス(財務DD)の主な調査項目は貸借対照表や損益計算書といった財務諸表であり、具体的には次のような勘定科目について検討を行うことになります。

売上債権

「金融商品に関する会計基準」に基づき適切に評価されているか。
売掛金や受取手形など売上債権は債務者の信用リスクを反映しているか。
売上債権回転期間を計算することにより、売上債権の残高が概ね適正かどうかを見ることができます。
コラム「売上債権回転期間の業種別適正水準と改善方法」

棚卸資産

「棚卸資産の評価に関する会計基準」に基づき適切に評価されているか。
不良在庫などの収益性が低下している棚卸資産はないか。
棚卸資産回転期間を計算することにより、在庫が概ね適正かどうかを見ることができます。
コラム「棚卸資産回転期間の業種別適正水準と改善方法」

固定資産

「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき適切に評価されているか。
減損の兆候のある固定資産はないか。

金融商品

「金融商品に関する会計基準」に基づき適切に評価されているか。
有価証券は適切に減損処理されているか。

退職給付引当金

「退職給付に関する会計基準」に基づき適切に会計処理されているか。
簿外債務(隠れ負債)となっている退職給付債務はないか。
コラム「確定給付年金の会計と税務」

債務

債務保証、保証予約、経営指導念書などの偶発債務はないか。

経営指導念書とは、一般的に、子会社等が金融機関等から借入を行う際に、親会社等としての監督責任を認め、子会社等が経営指導などを行うことを約して金融機関等に差し入れる文書をいい、実務的には、経営指導念書、念書、覚書、レター・オブ・アウェアネス、キープウェル・レター等の標題により作成されています。
ただし、標題そのものが付されていないものもあるので、その存在の把握に注意が必要です。
M&Aで一番と言ってもよいほど怖いリスクは、この簿外負債(隠れ負債)、偶発債務です。

買手がこれらの財務リスクを承知の上でM&Aを行うとしても、そのリスクをしっかりと把握し、買収価格に織り込む必要があります。
コラム「M&Aのデューデリジェンスにおける簿外債務(隠れ負債)の発見方法」

財務デューデリジェンス(財務DD)のチェックリスト

財務上のすべてのリスクを把握するためには、チェックリストを使用する方法があります。
チェックリストをまとめてくれている市販の本もありますし、財務諸表監査の経験がある公認会計士であれば一般的な監査手続書をもとにしてオリジナルのチェックリストを作成することもできるでしょう。
ただし、チェックすべき項目は数百個あるため、多くの時間とコストを費やせる大企業のM&Aは別にして、投入できる経営資源が限られている中小企業のM&Aの財務DDではチェックリストをどこまで運用するかは実務上の判断が必要な場面です。

まとめ

財務デューデリジェンス(財務DD)の主な調査項目は以上のとおりですが、デューデリジェンスは現地での資料のチェックとマネジメントインタビューだけ行えばよいのではありません。
現地での限られた日数で効果的かつ効率的に調査を進めるためにはしっかりとした事前準備が必要ですし、現地調査の中でリスクが低く時間がかかりそうと判断した調査項目については事後的な作業に切り替え、現地ではよりリスクが高い調査項目に対する手続を優先して実施しなければなりません。
デューデリジェンスはM&Aの早い段階から始まり、現地調査の後もまだ続くことになります。
コラム「経理担当者から見たM&Aのデューデリジェンスの流れと注意点」
コラム「財務デューデリジェンスと事前依頼資料」

法務デューデリジェンス(法務DD)

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法務デューデリジェンス(法務DD)とは、M&Aにおいて買収対象企業又は買収対象事業の法律上のリスクを把握するための手続であり、各種契約書などを検討することにより行われます。
リーガルデューデリジェンスとも言われます。
M&Aでは買収対象企業(事業)の契約関係(法律問題)をそのまま引き継ぐことになるため、法律上の問題点をあらかじめ明確にしておく必要があります。

法務デューデリジェンス(法務DD)と資格との関係

法務デューデリジェンスは弁護士の国家資格が必要であるため、弁護士が実施します。
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができません(弁護士法72条)。
弁護士でないものがM&Aの法務デューデリジェンスを実施してしまうと、非弁行為となり弁護士法違反となってしまいます。

法務デューデリジェンス(法務DD)の検討事項

各種契約書、訴訟、許認可、知的財産権、M&Aのスキームなど、法律的に検討が必要な事象は数多くあります。

買収後に事業の制約となるような契約(チェンジオブコントロール条項など)はないか、潜在的な訴訟のリスクのある事象はないか、事業の継続に必要な許認可や知的財産権は引継げるか又は取得できるか、どのようなM&Aのスキームを採用すれば法律的に安全でありまた当事者の要望を満たすのか、というようなことを検討する必要があります。
チェンジオブコントロール条項(Change of Control条項)(COC条項)とは、M&Aなどによって会社の経営権(Control)の移動(Chenge)があった場合に、契約の解除事由に該当したり、契約相手に対して通知や承諾を得なければならないといった条件のことです。
このチェンジオブコントロール条項があると、事業に大きな制約が発生してしまうおそれがあります。

また、反社会的勢力とのつながりや法令違法があると、自社グループ内にそれらのリスクを抱えることになり、大きな企業になればなるほど大きな問題へと発展しかねません。

財務リスクと同様、買手がこれらの法務リスクを承知の上でM&Aを行うとしても、そのリスクをしっかりと把握し、買収価格に織り込む必要があります。

その他にも、株主が多く存在する場合には、名義株の有無なども検討する必要があります。
名義株とは、株主名簿上の株主と真実の株主が一致していない株式のことです。
株主名簿では株主はAさんとなっているのに対し、真実の株主はBさんであることがあります。
平成2年の商法改正前においては、株式会社を設立するには発起人が7人以上必要であることが商法によって要求されていたため、名前を借りることがあった、ということも名義株発生の原因の1つとなっているようです。

税務デューデリジェンス(税務DD)

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税務デューデリジェンス(税務DD)とは、M&Aにおいて買収対象企業又は買収対象事業の税務上のリスクを把握するための手続であり、決算書・申告書などを検討することにより行われます。
M&Aでは買収対象企業の税務上のリスクをそのまま引き継ぐことになるため、税務上の問題点をあらかじめ明確にしておく必要があります。

税務デューデリジェンス(税務DD)と資格との関係

税務デューデリジェンスは税理士の国家資格が必要であるため、税理士が実施します。
税理士は、他人の求めに応じ、租税に関し、税務代理・税務書類の作成・税務相談を行うことを業とする者です(税理士法2条)。
そのため、税理士でないものがM&Aの税務デューデリジェンスを実施してしまうと税理士法違反となってしまいます。
中小企業のM&Aにおいては、税理士資格も持っている公認会計が、財務デューデリジェンスと税務デューデリジェンスを同時に行う場合が多くなっています。

税務デューデリジェンス(税務DD)の検討事項

税務調査が行われた直後であればそれほど慎重な検討は必要ないかもしれませんが、過去に問題となった税務上の論点や過去の別表調整を理解する上でも、M&Aにおいて税務デューデリジェンスは欠かせません。
しばらく税務調査が行われていない場合、税務調査が実施された際には最大何年間遡って修正・更正されるリスクがあるのかという観点から税務デューデリジェンスの調査範囲を検討することも多くなっています。

過去に税務調査で指摘された事項があるのであれば、その事項が現在正しく処理されているかというのを検討する必要があります。
また、経営者も認識していない税務上の問題がM&A実施後に発覚し、予想外の追徴課税を負うこともあります。
そのため、売上、売上原価、役員報酬、人件費・外注費(源泉所得税)、交際費、海外取引、消費税など、税務調査で問題になると影響が大きな項目についてはしっかりと検討する必要があります。
役員報酬や海外取引など、永久的に損金不算入となってしまい、かつその金額が大きくなってしまうおそれのある項目については、特に注意して検討する必要があります。

他のリスクの場合と同様、買手がこれらの税務リスクを承知の上でM&Aを行うとしても、そのリスクをしっかりと把握し、買収価格に織り込む必要があります。

人事労務デューデリジェンス(人事労務DD)

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出典:wikipedia

人事労務デューデリジェンス(人事労務DD)とは、M&Aにおいて買収対象企業又は買収対象事業の人事や労務リスクを把握するための手続です。
M&Aでは買収対象企業(事業)の雇用関係(労働問題)をそのまま引き継ぐことが多いため、その問題点をあらかじめ明確にしておく必要があります。

まず、未払残業(サービス残業)代、未払社会保険料・未払労働保険料、退職給付債務などの労働債務、労働基準法に関わる法的リスク、労使間の様々なトラブルを把握する必要があります。
具体的には、主に次のような検討を行います。
・就業規則の内容が労働基準法に違反していないかどうか
・従業員への就業規則の周知は適切かどうか
・過去に労働条件の不利益変更をしていないか
・給与規程に従って給与が支払われている(未払残業代がないか)
・労働基準監督署から是正勧告を受けていないか
・労働基準監督署にどのような是正報告をしたか

また、どのような人材がどの部署にいるか(特に幹部社員)を把握することが重要です。
M&Aが契機となり有能な人材が退職してしまうと計画したような業績を上げることができなくなるため、そのような人材には報酬やポストの面で待遇を良くする必要があるかもしれません。
逆に、M&Aの前に前経営陣に人員整理をしてもらうことが必要な場合もあります。

ITデューデリジェンス(ITDD)

ITデューデリジェンス(ITDD)とは、M&Aにおいて買収対象企業又は買収対象事業の情報システムを把握するための手続です。
情報システムは、かつては業務効率化(時間削減・コスト削減)のための1つの道具という位置付けでしたが、今や企業の事業活動を根本から支えるのみならず、競合他社との差別化を図り企業競争力の源泉にもなっています。
また、情報システムへの投資はとても多額になるため、M&Aにおいて現状の情報システムを把握しておくことはとても重要になっています。
具体的には、主に次のような目的で情報システムの把握を行います。
・情報システムが持つ本来の価値を最大に引き出し有効に活用する
・現在の情報システムが今後も継続して事業活動を支えることができるかを検討する
・事業活動を拡大する際に、必要なIT投資のコスト・期間を事前に把握しておく
・将来的にシステム統合を行う際に、必要なIT投資のコスト・期間を事前に把握しておく

事業デューデリジェンス(事業DD)

財務・税務・法務・労務といった他のデューデリジェンスでは、主に過去の情報を中心に調査が行われ現状のリスクを把握するのが中心になるのに対し、事業デューデリジェンスでは事業の将来性やM&A後のシナジー効果(相乗効果)を見極めることが中心になります。
事業の仕組みを理解し、SWOT(強み、弱み、機会、脅威)を把握することにより、いかにしてM&Aのシナジー効果を発揮させるかの戦略を立てます。
ビジネスデューデリジェンスとも言われます。

不動産デューデリジェンス(不動産DD)

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不動産デューデリジェンスは、不動産の投資のリスクとリターンを様々な面から詳細に検討するために実施する手続です。
法的な面から検討することにより、建築基準法や消防法などの法令に準拠しているかどうかや、隣地との境界や不動産の権利関係に問題がないかなどを確認します。
物理的・心理的な面からの検討により、物理的瑕疵や心理的瑕疵がないかどうかの調査が行われます。
経済的な面からも検討され、市場の動向・地域的な要因・立地条件などを把握し不動産の収益性を分析します。

環境デューデリジェンス(環境DD)

環境問題に対する社会的関心の高まってきており、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(PCB措置法)が施行され、2003年にも「土壌汚染対策法」が施行されました。
環境保全に取り組まなければ法令違反となり、損害賠償責任を追及されるのみならず、逮捕・懲役にまで発展するおそれがあります。

具体的には、次のようなものがないか、またそれらをもとの環境状態に戻すにはどのくらいのコストや期間がかかるのかを調査することになります。
・アスベスト(建築物の吹付け材、断熱材などに使われているおそれ)
・ポリ塩化ビフェニル廃棄物(PCB廃棄物)(変圧器、コンデンサなどに使われているおそれ)
・土壌汚染
・地下水汚染
・温室効果ガス(フロンガス、ハロンなど)
・ばい煙等排出ガス
・産業廃棄物
・騒音、振動
・危険物

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