【2022年】業態転換の3要件とあてはめ方

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事業再構築補助金の業態転換とは

事業再構築補助金の業態転換とは、製品の製造方法や、商品やサービスの提供方法を相当程度変更することです。

事業再構築指針においては、業態転換の定義は下記のように記載されています。
(参考)事業再構築指針における業態転換の定義
業態転換とは、製品又は商品若しくはサービスの製造方法又は提供方法を相当程度変更することをいう。

事業再構築補助金の業態転換の3要件

事業再構築補助金の業態転換に該当するためには、下記の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.製品方法や提供方法の新規性要件
2.製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)、商品等の新規性要件又は設備撤去等要件(提供方法の変更の場合)
3.売上高10%等要件

このコラムでは、事業再構築補助金の業態転換の3要件の内容と、製造業、卸売業・小売業、サービス業・飲食店などを営んでいる事業者がこの3要件に具体的にどのようにあてはめればよいかについて説明しています。

業態転換の要件1.製品方法や提供方法の新規性要件

業態転換の要件1の製品方法や提供方法の新規性要件を満たすためには、以下の3つの要件(回復・再生応援枠では2つの要件)をすべて満たす必要があります。
※「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。

①過去に同じ方法で製造・提供した実績がないこと

過去に製造していた方法と同じ方法で製品を製造していたことがあってはならず、過去に実績がない方法で製品を製造することにチャレンジすることが必要になります。
卸売業・小売業の場合は、過去に同じ方法で商品を提供していたことがあってはなりません。
サービス業・飲食店の場合は、過去に同じ方法でサービス・メニューを提供していたことがあってはなりません。

②主要な設備を変更すること(回復・再生応援枠以外)

既存の設備で製品を製造するのではなく、製品を製造する主要な設備が変更されている必要があります。
卸売業・小売業の場合は、商品を提供する主要な設備が変更されていなければなりません。
サービス業・飲食店の場合は、サービス・メニューを提供する主要な設備が変更されていなければなりません。
※回復・再生応援枠においては要件が撤廃

③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)

製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合、性能や効能が異なっている必要があります。
具体的には、既存製品と比べ、新たな製造方法の方が、生産効率、燃費効率等がX%向上する等を事業計画の中で示す必要があります。

製品方法や提供方法の新規性要件を満たさない場合

・過去に製品等を製造等していた方法により、改めて製品等を製造等する場合(例えば、衣料品販売店を経営する企業が、既に行っているネット販売事業を拡大する場合)。
・既存の製造方法等に必要な主な設備が新たな製造方法等に必要な主な設備と変わらない場合(例えば、衣料品販売店が、従来の商品を単にECサイトを用いて販売網を拡大するなど、新たな設備投資を伴わない場合)。
・既存の製品等と新製品等の性能に有意な性能の差が認められない場合(例えば、工場の無人化を図るためにデジタル技術を導入する計画を立てたが、従来と比べて生産性の向上が何ら見込まれない場合)。
・製品等の既存の製造方法等により、単に製造量等を増大させる場合(例えば、衣料品販売店を3店舗経営する企業が、新たに同様の販売店をもう1店舗開店する場合)。
・製品等の既存の製造方法等に容易な改変を加えた方法で、製品等を製造等する場合(例えば、衣料品販売店を経営する企業が、既に行っているネット販売事業でポイント制度を導入する場合)。
・製品等の既存の製造方法等を単に組み合わせた方法で、製品等を製造等する場合(例えば、衣料品販売店を経営する企業が、既に別々に行っているネット販売事業とサブスク事業を組み合わせ、ネット・サブスク事業とする場合)。

飲食店がテイクアウトや宅配を始める場合の考え方

飲食店が、新分野展開・事業転換・業種転換でなく、業態転換でテイクアウトや宅配を計画しており、新たな設備投資を伴わずプラットフォームサービスとして提供されているECサイトを用いてメニューを提供するだけの場合、事業再構築補助金の制度設計当初は要件を満たさないとされていましたが、現在ではその記載はなく要件を満たすと考えられます。

ただし、一過性の支出と認められるような支出が補助対象経費の大半を占めていないかを含め、要件をしっかりと満たしているかを慎重に判断する必要があります。

業態転換の要件2.製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)、商品等の新規性要件又は設備撤去等要件(提供方法の変更の場合)

業態転換の要件2を満たすためには、製造方法を変更する場合は製品の新規性要件、提供方法を変更する場合は商品等の新規性要件又は設備撤去等要件を満たす必要があります。

※製品の新規性要件は、製造業の分野で事業再構築を行う場合に限って必要となります。
※商品等の新規性要件又は設備撤去等要件は、製造業以外の分野で事業再構築を行う場合に限って必要となります。

製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)

製品の新規性要件を満たすためには、さらに3つの要件をすべて満たす必要があります。
※「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。

①過去に製造した実績がないこと

過去に製造をしていた製品を再製造してはなりません。

②主要な設備等を変更すること

新製品を製造するための主要な設備や装置が変更されていなければなりません。

※主要な設備等の変更の考え方
事業再構築指針の手引きでは、下記の場合は主要な設備等が変更されていないとしています。
例)これまでパウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。

③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)

製品の性能や効能が定量的に計測できる場合、性能や効能が異なっている必要があります。
具体的には、既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等を事業計画の中で示す必要があります。
事業再構築指針の手引きでは、下記の場合は性能や効能が異なっていないとしています。
例)従来から製造していた半導体と性能にほぼ差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。

商品等の新規性要件又は設備撤去等要件(提供方法の変更の場合)

商品等の新規性要件

商品等の新規性要件は、製品の新規性要件と同じです。
卸売業・小売業の場合は、過去に販売していた商品を再販売してはなりません。
サービス業・飲食店の場合は、過去に提供していたサービス・メニューを再提供してはなりません。

設備撤去等要件

事業再構築指針の手引きでは、下記の場合は商品等の新規性要件又は設備撤去等要件が満たされていないとしています。
例)飲食店が、例えば、新たな商品を提供することも設備の撤去を行うこともなく、単にテイクアウト販売を新たに始める場合。

業態転換の要件3.売上高10%等要件

業態転換の要件3の売上高10%等要件を満たすためには、3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製造方法や提供方法の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上を占めることが見込まれるものである必要があります。
※10%(又は15%)は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高(又は付加価値額)がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。

業態転換の公表事業計画書

第1回公募の採択事例のうち、公開の協力が得られた事業者の事業計画書が事業再構築補助金のホームページにおいて公表されていますので、事業計画作成のヒントになると思います。

第1回、サービス業、業態転換

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公表事業計画書(第1回、サービス業、業態転換)

第1回、情報通信業、業態転換

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公表事業計画書(第1回、情報通信業、業態転換)

公表事業計画書(第1回、製造業、新分野展開・業態転換)

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公表事業計画書(第1回、製造業、新分野展開・業態転換)

業態転換の例

サービス業の業態転換の例

事業再構築指針の手引きでは、サービス業の業態転換の例として、「ヨガ教室を経営していたところ、コロナの影響で顧客が激減し、売上げが低迷していることを受け、サービスの提供方法を変更すべく、店舗での営業を縮小し、オンラインサービスを新たに開始し、オンラインサービスの売上高が、3年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上を占める計画を策定している場合。」が挙げられています。

要件1.製品方法や提供方法の新規性要件要件①過去に同じ方法で製造・提供した実績がないこと過去にオンラインサービスを営んだ実績がない場合には、要件を満たす。
要件②主要な設備を変更すること(※回復・再生応援枠は除く)オンラインサービスを開始するために、新たに配信機材等を導入する必要があり、その費用がかかる場合には、要件を満たす。
要件③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)新たに導入した提供方法により、1回当たりの提供コスト等、生産効率がどの程度改善しているか等を示すことで要件を満たす。
要件2.製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)、商品等の新規性要件又は設備撤去等要件(提供方法の変更の場合)要件①過去に製造した実績がないことヨガに加えて、新たにエアロビクスを始める場合、過去にエアロビクスのサービスを提供したことがなければ要件を満たす。
要件②主要な設備等を変更すること※回復・再生応援枠は除く)ヨガに加えて、新たにエアロビクスを始める場合、エアロビクスのサービスを新たに始めるために、新たに大型ミラーの設置や防音設備等が必要であり、その費用がかかる場合には、要件を満たす。
要件③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)ヨガに加えて、新たにエアロビクスを始める場合、ヨガとエアロビクスは、異なるサービスであり、定量的に性能又は効能を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。
要件1⃣商品等の新規性要件又は設備撤去等要件店舗の営業を縮小するに際して、既存設備を撤去することを示すことで要件を満たす。
要件3.売上高10%等要件3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製造方法や提供方法の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額15%)以上となる計画を策定すること3年間の事業計画期間終了時点において、オンラインサービスの売上高が、総売上高の10%(又は総付加価値額15%)以上となる計画を策定していることで要件を満たす。

製造業の業態転換の例

事業再構築指針の手引きでは、製造業の業態転換の例として、「健康器具を製造している製造業者が、コロナの感染リスクを抑えつつ、生産性を向上させることを目的として、AI・IoT技術などのデジタル技術を活用して、製造プロセスの省人化を進めるとともに、削減が見込まれるコストを投じてより付加価値の高い健康器具を製造し、新たな製造方法による売上高が、5年間の事業計画期間終了後、総売上高の10%(又は総付加価値額15%)以上を占める計画を策定している場合。」が挙げられています。

要件1.製品方法や提供方法の新規性要件要件①過去に同じ方法で製造・提供した実績がないこと過去に、今回導入しようとしているAI・IoT技術などのデジタル技術を活用した省人化による方法で、製品を製造した実績がない場合には、要件を満たす。
要件②主要な設備を変更すること省人化のために、AI・IoT技術などのデジタル技術に関する専用の設備が新たに必要であり、当該設備を導入する場合には、要件を満たす。
要件③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)新たに導入した製造方法により、1個当たりの製造コスト等、生産効率がどの程度改善しているか等を示すことで要件を満たす。
要件2.製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)、商品等の新規性要件又は設備撤去等要件(提供方法の変更の場合)要件①過去に製造した実績がないこと新たに製造する健康器具が、これまでに製造した健康器具と同じ健康器具ではなければ、要件を満たす。
要件②主要な設備等を変更すること※回復・再生応援枠は除く)新たな健康器具を製造するために、既存プロセスのコストを抑えるため、省人化に関するAI・IoT技術などのデジタル技術に関する専用の設備が新たに必要であり、当該設備を導入する場合は要件を満たす。
要件③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)新たに製造する健康器具と既存の健康器具との性能(健康効果等)の違いを説明することで要件を満たす。
要件1⃣商品等の新規性要件又は設備撤去等要件-(提供方法の変更でない)
要件3.売上高10%等要件3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製造方法や提供方法の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額15%)以上となる計画を策定すること5年間の事業計画期間終了時点において、新たな製造方法で製造した新たな健康器具が、総売上高の10%(又は総付加価値額15%)以上となる計画を策定していることで予定を満たす。

これらの要件のすべてを満たすことによって業態転換に該当し、事業再構築補助金を受給することができます。

業態転換の活用イメージ集

業態転換の活用イメージ集(PDF)

中小企業庁から業態転換の活用イメージ集が公表されており、大きなイメージをつかむには参考になります。

業態転換の4つの活用イメージ

業種現在事業再構築後
小売業アパレルショップを経営していたところ、コロナの影響で実店舗での売上げが減少ECサイトや注文管理システムの構築、店頭販売からの誘導等によりネット販売を新たに開始
飲食業レストランを経営していたところ、コロナの影響により来客数が大幅に減少店舗の一部を縮小し、非対面式の注文システムを活用したテイクアウト販売を新たに開始
サービス業アーティストのライブやアート展示会等の運営を担うイベント運営会社が、コロナの影響によりイベントの中止が続出コロナの感染リスクを抑えつつイベントを開催するために、ライブや展示会をバーチャル上で再現するサービスの提供を開始
美容室美容室を経営していたところ、コロナの影響により利用客が減少し、売上が大幅に減少店舗を縮小し、外出の機会を減らしたいと考える利用客や、移動が難しい高齢者向けに、訪問美容サービスを新たに開始

事業再構築補助金の他の類型

事業再構築には5つの類型があり、この5つの類型のいずれかに該当すれば事業再構築をしたことになり、事業再構築補助金を受給することができます。
1.新分野展開
2.事業転換
3.業種転換
4.業態転換
5.事業再編

このコラムでは、業態転換について記載しましたが、その他の4つの類型(新分野展開、事業転換、業種転換、事業再編)については、それぞれ下記のコラムをご参照下さい。
コラム「事業再構築補助金の新分野展開の3要件とあてはめ方」
コラム「事業再構築補助金の事業転換の3要件とあてはめ方」
コラム「事業再構築補助金の業種転換の3要件とあてはめ方」
コラム「事業再編を行った場合の事業再構築の該当性の判断方法」

事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)

税理士法人MFMは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)としてこれまで多くの事業計画の作成支援を行い、中小企業・中堅企業の経営を支援してきました。税理士法人MFMの第5回公募の採択率は4件中4件採択(採択率100%)と平均的な採択率を大きく上回っていました。採択されやすいポイントを押さえた事業再構築補助金の事業計画の作成を支援いたします。費用・料金も利用しやすい低価格になっています。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の名称税理士法人MFM
大阪事務所大阪府大阪市北区豊崎三丁目17番29号
TEL:06-6371-1768
サービス案内、費用・料金案内事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)
認定日2018年12月21日
具体的相談内容等創業等支援、事業計画作成支援、経営改善、事業承継、M&A、事業再生、情報化戦略、販売開拓・マーケティング、マッチング、人材育成、人事・労務、海外展開等、BCP(事業継続計画)作成支援
M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)

税理士法人MFMグループは大阪、東京を拠点としていますが、関西(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)や関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)のみならず、お電話、オンライン、Web会議(Zoomなど)で全国の事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)が可能です。