【小売業】事業再構築補助金の活用の手引き

jigyou-saikouchiku-hojokin-retail

事業再構築補助金とは

事業再構築補助金とは、新事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援するための補助金です。
この事業再構築補助金は、2020年12月15日に閣議決定された令和2年度第3次補正予算に初めて盛り込まれた補助金です。
当初予算額1兆1,485億円、追加予算額6,123億円となっており、かなり大きな予算が割り当てられている補助金となっています。
正式名称は「中小企業等事業再構築促進事業」です。

小売業が事業再構築補助金を活用すべき理由

このような大きな予算が割り当てられた新しい補助金制度ができたのは、新型コロナウイルス感染症拡大の影響に他なりません。
小売業は、緊急事態宣言時には休業要請の対象外でしたが、残念ながらその影響を大きく受けてしまいました。
一度目の緊急事態宣言解除後は持ち直しが見られますが、外出を控えることによる来店頻度の減少などにより以前のようにはまだ戻らない小売業が多くなっています。
地域によっては繰り返される緊急事態宣言により客足がまた遠くなってしまっています。

小売業を営んでいる事業者が、新型コロナウイルスの影響により売上⾼が10%以上減少し事業再構築を計画している場合は、事業再構築補助金を申請し、中小企業庁が準備してくれている補助金制度をしっかりと活用されることをおすすめします。

小売業の事業再構築補助金の申請

第1回公募において、約22,000件の応募がありましたが、その中に小売業・卸売業の申請が約3,000件あり、申請数の多さでは製造業に続いて多くなっています。

小売業・卸売業約3,000件÷全体約22,000件=約15%

小売業の採択事例

小売業の事業再構築と一口に言っても、小売業内の事業再構築、小売業→小売業以外への事業再構築、小売業以外→小売業への事業再構築とパターンが分かれます。

小売業内の事業再構築

・急速冷凍機導入によるギフトセットの開発
・厳選食材で加工食品をプロデュース
・オンラインショッピングサイトの開設

小売業→小売業以外の事業再構築

・新商品開発で小売専業からの脱却
・小売事業者から運送業へ
・八百屋がつくる弁当・惣菜

小売業以外→小売業の事業再構築

・リユース事業へ
・古民家カフェでのパン製造販売への新分野展開
・ペット用品小売業への参入

小売業の事業再構築補助金の活用イメージ

経済産業省のリーフレットの例

経済産業省のリーフレットに小売業の例が記載されています。

衣服販売業のケース

衣料品のネット販売やサブスクリプション形式のサービス事業に業態を転換。

※サブスクサービスとは
サブスクリプション(Subscription)サービスの略であり、商品を売買するビジネスモデルではなく、商品を一定期間を利用する方式のサービスです。
サブスクという言葉よりも、月額課金や定額制という言葉の方が分かりやすいかもしれません。
小売業者は一般消費者に対して商品を販売していますが、サブスクの場合はサービスを提供することになります。
小売業からサブスクへの転換の例としては、
・映画やドラマのBD,DVDの販売→「Netflix(ネットフリックス)」「Hulu(フールー)」「Amazon Prime Video」など
・音楽CDの販売→「Apple Music」「Spotify(スポティファイ)」「LINE MUSIC」など
・雑誌の販売→「dマガジン」「楽天マガジン」など

ガソリン販売のケース

新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応。

中小企業庁の活用イメージ集の例

中小企業庁の活用イメージ集(業態転換)にも小売業の例が記載されています。

アパレルショップが、ECサイトや注文管理システムの構築、店頭販売からの誘導等によりネット販売を新たに開始すると、事業再構築を行ったことになります。

小売店がECプラットフォームやECモールでネット販売を始めるだけで事業再構築になる?

事業再構築とは何か

事業再構築指針や事業再構築指針の手引きでは、事業再構築には5つの類型に分けられています。
5つの類型のいずれかに該当すれば事業再構築となり、事業再構築補助金を受給できる対象となります。
1.新市場進出(新分野展開、業態転換)
2.事業転換
3.業種転換
4.事業再編
5.国内回帰

新分野展開にあてはまるか

事業再構築補助金の新分野展開とは、主たる業種や主たる事業を変更することなく、新たな製品等で新たな市場に進出することです。

※業種とは、日本標準産業分類の大分類です。
※事業とは、日本標準産業分類の中分類、小分類又は再分類です。

この新分野展開には製品等の新規性要件を満たす必要となり、小売業の場合は新商品の販売が必要となります。
そのため、ネット販売では新分野展開とはなりません。

事業転換や業種転換にはてはまるか

事業再構築補助金の事業転換とは、主な業種を変更することなく、新たな製品を製造し又は新たな商品やサービスを提供することにより、主たる事業を変更することです。
事業再構築補助金の業種転換とは、新たな製品を製造し又は新たな商品やサービスを提供することにより、主たる業種を変更することです。

先ほどの製造業(伝統工芸品製造)の活用イメージで「ECサイト(オンラン上)での販売を開始。」とあり、事業再構築になるとされています。
一見すると、小売業もECサイト(オンラインサイト)での販売を始めると事業再構築になるように見えます。

製造業の場合では、日本標準産業分類に当てはめると製造業から小売業への「業種転換」と見ることができるため、事業再構築となります。
・製品を製造し卸売業者又は小売業者に販売→製造業
・製品を製造し個人又は家庭用消費者へ販売(いわゆる製造小売業)→小売業

しかし、小売業がネット販売をしても小売業であることには変わりはないため、事業転換や業種転換にはあてはまらないのです。
・実店舗で一般消費者に販売→小売業
・ネットショップで一般消費者に販売→小売業

業態転換にあてはまるか

事業再構築補助金の業態転換とは、製品の製造方法や、商品やサービスの提供方法を相当程度変更することです。
小売業の場合、商品の提供方法を相当程度変更する必要があります。

この点、事業再構築指針の手引きでは、下記のような場合は製品方法や提供方法の新規性要件を満たさず、業態転換にはならないとされています。
・過去に製品等を製造等していた方法により、改めて製品等を製造等する場合(例えば、衣料品販売店を経営する企業が、既に行っているネット販売事業を拡大する場合)。
・既存の製造方法等に必要な主な設備が新たな製造方法等に必要な主な設備と変わらない場合(例えば、衣料品販売店が、従来の商品を単にECサイトを用いて販売網を拡大するなど、新たな設備投資を伴わない場合)。

新たな設備投資を伴わずプラットフォームサービスとして提供されているECサイトを用いて販売するだけの場合、事業再構築補助金の制度設計当初は要件を満たさないとされていましたが、現在ではその記載はなく要件を満たすと考えられます。

ただし、一過性の支出と認められるような支出が補助対象経費の大半を占めていないかを含め、要件をしっかりと満たしているかを慎重に判断する必要があります。

小売業の事業再構築補助金の対象会社

事業再構築補助金の対象会社は中小企業等とされており、「中小企業」に加えて「中堅企業」が対象となります。

中小企業

小売業においては、下記の資本金基準と従業員基準のいずれかを満たす会社及び個人事業主が対象です。

資本金の額又は出資の総額常時使用する従業員の数
5千万円以下50人以下

【注1】大企業の子会社等の、いわゆる「みなし大企業」は支援の対象外です。
【注2】確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える場合は、中小企業ではなく、中堅企業として支援の対象となります。
【注3】企業組合、協業組合、事業協同組合を含む「中小企業等経営強化法」第2条第1項が規定する「中小企業者」や、収益事業を行う等の要件を満たすNPO法人も支援の対象です。

※個人事業主(フリーランス)には資本金がないため、従業員基準のみで事業再構築補助金の対象者に該当するかどうかを判定することになります。

コラム「すぐに分かる!事業再構築補助金の中小企業者等の範囲」

中堅企業

以下に当てはまる法人を指します。詳細は公募要領を参照してください。
・中小企業基本法に定める中小企業者に該当しないこと。
・資本金の額又は出資の総額が10億円の未満の法人であること。
・資本金の額又は出資の総額が定められていない場合は、従業員数(常勤)が2,000人以下であること。

事業再構築補助金の対象要件

1. 2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3カ⽉の合計売上⾼が、コロナ以前の同3カ⽉の合計売上⾼と⽐較して10%以上減少している中⼩企業等。
2.事業計画を認定経営革新等支援機関や金融機関と策定し、一体となって事業再構築に取り組む中小企業等。
3.補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(一部5.0%)以上増加の達成。

※認定支援機関とは、中小企業を巡る経営課題が多様化・複雑化する中、中小企業に対して専門性の高い支援を行うため、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を国が審査し認定した機関であり、正確な名称は「経営革新等支援機関」です。具体的には、税理士、公認会計士、弁護士、中小企業診断士等が認定支援機関となっています。税理士法人MFMは認定⽀援機関に認定されているため、申請サポート(事業計画の作成支援)により企業の経営を支援しています。
※補助金額が3,000万円を超える申請には金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定する必要があります。
※「事業再構築指針」に沿った事業計画には、新市場進出(新分野展開、業態転換)、事業転換、業種転換、事業再編、国内回帰の5つの類型があります。
※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

事業再構築補助金の補助金額・補助率

jigyou-saikouchiku-hojokin-kingaku

事業再構築補助金の補助対象経費

事業再構築補助金の11の補助対象経費

事業再構築補助金の対象となる経費は下記の11項目です。
1.建物費
2.機械装置・システム構築費
3.技術導入費
4.専門家経費
5.運搬費
6.クラウドサービス利用費
7.外注費
8.知的財産権等関連経費
9.広告宣伝・販売促進費
10.研修費
11.廃業費

また、対象とならない補助対象外経費についても細かな規定が存在します。

補助対象経費の活用方法や補助対象外経費については、コラム「【事業再構築補助金】11の補助対象経費の上手な活用方法」に記載しています。

⾃社の強みや経営資源(ヒト/モノ等)を活かしつつ事業再構築を行うことが一般的ですが、現状の店舗やシステムのままでは事業再構築は困難である場合には改装等が必要となることがあるでしょう。
そして、現状よりも付加価値額を増加させる、又は従業員一人あたり付加価値額を高める投資を行う必要があることが成果目標に掲げられています。
人材投資については、従業員の人件費は補助対象経費とはならないことから、小売業において販売員の人材獲得を実施したとしても事業再構築補助金の対象にはなりません。

小売業の広告宣伝・販売促進

新分野展開・事業転換・業種転換により事業再構築を行う場合、新規市場に参入することになります。
ほとんどの場合はすでに多くの既存業者がおり、既存業者はこれまでの実績・信頼・ブランド力などがあるため、広告宣伝・販売促進活動を行わなければ新規市場で生き残っていくことができません。
逆に言うと、広告宣伝・販売促進活動をしっかり行えば、新規市場でどんどん売上を上げていくことが可能です。

小売業の事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)

税理士法人MFMは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)としてこれまで多くの事業計画の作成支援を行い、中小企業・中堅企業の経営を支援してきました。税理士法人MFMの第5回公募の採択率は4件中4件採択(採択率100%)と平均的な採択率を大きく上回っていました。採択されやすいポイントを押さえた事業再構築補助金の事業計画の作成を支援いたします。費用・料金も利用しやすい低価格になっています。

認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の名称税理士法人MFM
大阪事務所大阪府大阪市北区豊崎三丁目17番29号
TEL:06-6371-1768
サービス案内、費用・料金案内事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)
認定日2018年12月21日
具体的相談内容等創業等支援、事業計画作成支援、経営改善、事業承継、M&A、事業再生、情報化戦略、販売開拓・マーケティング、マッチング、人材育成、人事・労務、海外展開等、BCP(事業継続計画)作成支援
M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)

税理士法人MFMグループは大阪、東京を拠点としていますが、関西(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)や関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)のみならず、お電話、オンライン、Web会議(Zoomなど)で全国の事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)が可能です。