【2023年】新市場進出の3要件とあてはめ方
事業再構築補助金の新市場進出(新分野展開、業態転換)とは
事業再構築補助金の新市場進出(新分野展開、業態転換)とは、主たる業種や主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出することです。
※業種とは、日本標準産業分類の大分類です。
※事業とは、日本標準産業分類の中分類、小分類又は再分類です。
事業再構築補助金の新市場進出(新分野展開、業態転換)の3要件
事業再構築補助金の新市場進出に該当するためには、下記の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.製品等の新規性要件
2.市場の新規性要件
3.売上高10%等要件
このコラムでは、事業再構築補助金の新市場進出の3要件の内容と、製造業、卸売業・小売業、サービス業・飲食店などを営んでいる事業者がこの3要件に具体的にどのようにあてはめればよいかについて説明しています。
新市場進出の要件1.製品等の新規性要件
新市場進出の要件1の製品等の新規性要件を満たすためには、以下の3つの要件(回復・再生応援枠では2つの要件)をすべて満たす必要があります。
※「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。
①過去に製造等した実績がないこと
過去に製造をしていた製品を再製造してはなりません。
卸売業・小売業の場合は、過去に販売していた商品を再販売してはなりません。
サービス業・飲食店の場合は、過去に提供していたサービス・メニューを再提供してはなりません。
②定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ)
製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合、性能や効能が異なっている必要があります。
具体的には、既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等を事業計画の中で示す必要があります。
事業再構築指針の手引きでは、下記の場合は性能や効能が異なっていないとしています。
例)従来から製造していた半導体と性能にほぼ差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。
その他、製品等の新規性要件を満たさない場合
・既存の製品の製造量又は既存の商品若しくはサービスの提供量を増大させる場合(例えば、自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合)。
・事業者の事業実態に照らして容易に製造又は提供が可能な新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合(例えば、自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合)。
・既存の製品又は既存の商品若しくはサービスに容易な改変を加えた新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合(例えば、自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合)。
・既存の製品又は既存の商品若しくはサービスを単に組み合わせて新製品又は新商品若しくは新サービスを製造又は提供する場合(例えば、自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合)。
新市場進出の要件2.市場の新規性要件
新市場進出の要件2の市場の新規性要件を満たすためには、既存事業の対象顧客を明確にした上で、新規事業の対象顧客層が明確に異なっていることについて、事業計画で説明する必要があります。
例えば、日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、既存事業の顧客は店舗で飲食する方であるのに対し、新規事業の顧客は料理を学びたい方であり、顧客の対象が明確に異なり、市場の新規性要件を満たすと考えられます。
新市場進出の要件3.売上高10%等要件
新市場進出の要件3の売上高10%等要件を満たすためには、3~5年間の事業計画期間終了後、新製品等の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上を占めることが見込まれるものである必要があります。
卸売業・小売業の場合は新商品、サービス業・飲食店の場合は新サービスということになります。
※10%(又は15%)は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高(又は付加価値額)がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。
新市場進出の手引きの例
製造業の新市場進出の例
事業再構築指針の手引きでは、製造業の新市場進出の例として、「航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定している場合。」が挙げられています。
要件1.製品等の新規性要件 | ①過去に製造等した実績がないこと | 新たに製造する医療機器部品が、過去に製造した実績のない部品であれば、要件を満たす。 |
②定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ) | 新たに製造する医療機器部品と従来製造していた航空機用部品が異なる部品であれば、定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。ただし、両部品が類似の製品であって、その性能(強度や軽さ等)を比較することが可能な場合には、差異を定量的に説明することで、要件を満たす。 | |
要件2.市場の新規性要件 | 既存事業と新規事業の顧客層が異なること | 医療機器部品と航空機用部品では、医療機器業界と航空機業界で明確に顧客層が異なり、要件を満たす。 |
要件3.売上高10%等要件 | 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定すること | 5年間の事業計画期間終了後、医療機器部品の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定することで要件を満たす。 |
不動産業の新市場進出の例
事業再構築指針の手引きでは、不動産業の新市場進出の例として、「都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定している場合。」が挙げられています。
要件1.製品等の新規性要件 | 要件①過去に製造等した実績がないこと | 過去にレンタルオフィス業を営んだことがなければ、要件を満たす。 |
要件②定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合のみ) | ウィークリーマンションとレンタルオフィスでは、提供するサービスの種類が異なり、定量的に性能又は効能を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。 | |
要件2.市場の新規性要件 | 既存事業と新規事業の顧客層が異なること | 既存事業の対象顧客は出張で短期間滞在するビジネス客であったが、新規事業の対象顧客は近隣のビジネスマンや契約企業であり、顧客層が異なるため要件を満たす。 |
要件3.売上高10%等要件 | 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定すること | 3年間の事業計画期間終了後、レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%(又は総付加価値額の15%)以上となる計画を策定することで要件を満たす。 |
これらの要件のすべてを満たすことによって新市場進出に該当し、事業再構築補助金を受給することができます。
新市場進出の公表事業計画書
第1回公募の採択事例のうち、公開の協力が得られた事業者の事業計画書が事業再構築補助金のホームページにおいて公表されていますので、事業計画作成のヒントになると思います。
公表事業計画書(第1回、宿泊業、新分野展開)
公表事業計画書(第1回、サービス業、新分野展開)
公表事業計画書(第1回、製造業、新分野展開・業態転換)
新市場進出の活用イメージ集
新分野展開の活用イメージ集(PDF)
中小企業庁から新分野展開の活用イメージ集が公表されており、大きなイメージをつかむには参考になります。
新分野展開の4つの活用イメージ
業種 | 現在 | 事業再構築後 |
製造業 | ドライブレコーダーなどの車載製品を製造していたところ、コロナの影響で売上が減少 | 新たに需要の拡大が見込まれる医療用ライトなどの医療分野向け製品の製造を開始 |
建設業 | 宿泊施設や観光施設などの事業施設向けの建設業を営んでいたが、コロナにより業界全体が業績不振 | 新たに需要が増しているアクリル板などのプラスチック加工製品の製造に着手 |
製造業 | 航空機部品を専門に製造していた製造業者が、コロナにより需要減少 | 新たに需要が見込まれる半導体関連部品の製造に着手 |
宿泊業 | 宿泊施設を営んでいた事業者が、コロナの影響により収入が減少 | コロナ禍でのキャンプ需要を受けて、新たにオートキャンプ場施設の経営を開始 |
新市場進出の広告宣伝・販売促進費活動
新市場進出により事業再構築を行う場合、新規市場に参入することになります。
ほとんどの場合はすでに多くの既存業者がおり、既存業者はこれまでの実績・信頼・ブランド力などがあるため、広告宣伝・販売促進活動を行わなければ新規市場で生き残っていくことができません。
逆に言うと、広告宣伝・販売促進活動をしっかり行えば、新規市場でどんどん売上を上げていくことが可能です。
事業再構築補助金の他の類型
事業再構築には5つの類型があり、この5つの類型のいずれかに該当すれば事業再構築をしたことになり、事業再構築補助金を受給することができます。
1.新市場進出(新分野展開、業態転換)
2.事業転換
3.業種転換
4.事業再編
5.国内回帰
事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)
税理士法人MFMは、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)としてこれまで多くの事業計画の作成支援を行い、中小企業・中堅企業の経営を支援してきました。税理士法人MFMの第5回公募の採択率は4件中4件採択(採択率100%)と平均的な採択率を大きく上回っていました。採択されやすいポイントを押さえた事業再構築補助金の事業計画の作成を支援いたします。費用・料金も利用しやすい低価格になっています。
認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の名称 | 税理士法人MFM |
大阪事務所 | 大阪府大阪市北区豊崎三丁目17番29号 |
TEL:06-6371-1768 | |
サービス案内、費用・料金案内 | 事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援) |
認定日 | 2018年12月21日 |
具体的相談内容等 | 創業等支援、事業計画作成支援、経営改善、事業承継、M&A、事業再生、情報化戦略、販売開拓・マーケティング、マッチング、人材育成、人事・労務、海外展開等、BCP(事業継続計画)作成支援 M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD) |
税理士法人MFMグループは大阪、東京を拠点としていますが、関西(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)や関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)のみならず、お電話、オンライン、Web会議(Zoomなど)で全国の事業再構築補助金の申請サポート(事業計画の作成支援)が可能です。