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日本政策金融公庫と制度融資の有利比較

創業時の資金調達の方法として、日本政策金融公庫と制度融資ではどちらの方が有利なのでしょうか。
事業主が一番関心が大きいのはやはり「どちらの方がより低い金利で借りられるか」という点にあると思います。
しかしながら、金利についてはケースバイケースなので一概にどちらの方が有利であるかは断言できません。
日本政策金融公庫のどの種類の融資が使えるかでも金利が変わりますし、どの市区町村の制度融資を使うかでも金利が変わります。
金利についてしっかりと比較検討するためには、両方に問い合わせる必要があります。
ただ1つだけ言えることは、両者にそれほど大きな金利の差はありません。

最初に結論から申し上げると、個人的な見解になりますが、日本政策金融公庫の方が総合的に見ると良いと思います。

日本政策金融公庫の長所と短所

まず、日本政策金融公庫の長所と短所について説明します。

長所としては(すべての場合には当てはまりませんが)以下のようなものがあります。
▢ 原則として無担保・無保証で借りることができる
▢ 融資限度額が大きい
▢ 融資期間が長い
▢ 固定金利で借りることができる
▢ 融資のスピードが早い

短所としては
▢ 事業用の預金・決済口座はないので民間金融機関で口座を別途作る必要がある

日本政策金融公庫とは

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そもそも日本政策金融公庫とは政府が100%出資している政府系金融機関であり、民間金融機関の金融を補完するという役割があります。
最近は金利の低下もあり地銀も創業融資に積極的に動かざるを得ないという背景がありますが、民間金融機関は基本的には創業融資はあまり好みません。
なぜかと言うと、創業する人に過去に経営の実績がないため、資金調達や経営に対してどのような考え方や能力を持っている人なのか分かりません。
もしかするとすでに多くの借金があり、お金を借りれるだけ借りてその返済に回し、お金が返って来ないかもしれません。
ドンブリ勘定のいい加減な経営をしてすぐに倒産してしまう人かもしれません。
また、その金融機関に預金口座がなければ、今までの収入や現在の資産状況など、融資の判断材料となる客観的な根拠が手に入りません。
金融機関から見ると創業融資はハイリスクであるため、民間金融機関は基本的には創業融資はあまり好まないという実情があります。
このように民間金融機関が手を出しにくい創業融資に積極的に応じてくれるのが政府系金融機関の日本政策金融公庫です。
そこに政府系金融機関の存在意義があるのです。

日本政策金融公庫の最大のメリットは、やはり無担保・無保証で借りることができるという点です。
自宅を担保に入れなくても良いですし、経営者個人が保証人になる必要もありません。
そのため、創業者にはとても利用しやすい制度となっています。
融資限度額は最大で3,000万円(うち運転資金1,500万円)です。
融資期間は設備資金だと20年以内(運転資金だと7年以内)となっています。

固定金利と変動金利のどちらが有利かということですが、これは金利上昇局面か金利下落局面下かで異なります。
金利上昇局面であれば低い金利で固定した方が有利で、金利下落局面であれば金利が下がっていく変動金利の方が有利です。
ただし、今の金融市場を見てみると、金利はかつてないほど低い状態が続いているので、固定金利で大きく損をすることはありません。
また、融資のスピードについては後ほど触れますが、日本政策金融公庫が早いのではなく市区町村の制度融資が遅いのです。
ただし、先ほども述べたようにあくまで日本政策金融公庫は民間金融機関の金融を補完するのが目的なので、民間金融機関がしっかりとサービスを提供している預金・決済機能については、公庫は持っていません。

制度融資の長所と短所

次に、市区町村の制度融資の長所と短所について説明します。

長所としては(すべての場合に当てはまりませんが)以下のようなものがあります。
▢ 利子補給や保証料補助により低い金利で借りられる可能性がある

短所としては
▢ 借入金利とは別に信用保証料が発生するため、合計すると金利が高くなるおそれもある
▢ 融資が下りるまでの期間が長い(3ヶ月近く時間がかかることがある)
▢ 融資限度額が低い

制度融資とは

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制度融資とは、地方自治体が金融機関に利子補給や保証料補助をすることにより、低い金利で借りることができる制度です。
日本政策金融公庫が日本全体の制度であるのに対し、制度融資は地方自治体の制度になっています。
そのため、地方自治体によって利子補給や保証料補助の割合が異なります。
例えば、東京都中央区の創業時の制度融資の場合、利子補給により0.4%で借りることができ、補助により保証料が1/3になります。
大阪市の創業時の制度融資の場合、利子補給により1.2%で借りることができ、補助により保証料が0.5(融資額により0.6%)になります。
ただし、民間金融機関の創業融資は基本的に信用保証協会の保証が必要になるため、借入金利と信用保証料の合計で金利を検討する必要があります。

また、制度融資は審査に時間がかかるので融資が下りるのに3ヵ月近くかかる場合があります。
制度融資はまずは自治体に申請し、自治体が民間金融機関を紹介するという流れで行われ、そこに信用保証協会も関わってきます。
このように、自治体・金融機関・信用保証協会と関係機関が多くなるので時間がかかるのです。
開業時の資金調達は急ぐ場合が多いので、間に合わないこともあります。
特に一般消費者向けに店舗を借りてサービスを提供する飲食業・美容業・医療業などの場合、テナント物件が決まれば開業まであまり時間的な余裕がありません。

そして、制度融資は一般的に融資の限度額が低くなっています。
もし希望する融資額に届いていなければ足りない部分は他の金融機関から調達する必要があり、手間がかかってしまいます。

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開業時の資金調達についての補足

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補足①借入をするか自己資金で賄うか

創業時は資金調達をするには絶好の機会です。
100%自己資金で賄えるとしても、いくらかは借入をすることをお勧めします。
事業が軌道に乗るには思っているよりも長い時間がかかる場合が多くなっています。
銀行は「雨の日に傘を貸さない」とよく言われますが、残念ながら概ね間違っていません。
創業計画書のようには売上が上がらず資金繰りが厳しくなった時に銀行に借入の申し込みをしても貸してくれる望みはかなり薄くなります。
大事なのは「雨が降る前に傘を借りておく」ことです。
「借金=悪い事」と思っている方があればそれは間違いです。
借金は事業を大きくするためには必要不可欠なものなので上手に活用しましょう。

補足②メガバンクからの資金調達について

近年、反社会的勢力や詐欺などの犯罪行為に使われないようにするため、メガバンクの法人口座開設がとても厳しくなってきています。
銀行口座は最初の事業の取引が発生する前に作っておきたいところですが、それができないような場合があります。
要は事業の実績がないと法人口座の開設ができないおそれがあります。
口座開設でもそのような状況なので、借入の申し込みをしたらどのようなるのか・・想像するのは難しくありません。

補足③日本政策金融公庫を使う場合の注意点

融資限度額は最大で3,000万円(うち運転資金1,500万円)と公表されていますが、実際には1,000万円程度以上の融資を受けたいのであれば担保や保証人を要求されることが多いようです。
また、自己資金要件があり融資金額の10分の1以上の自己資金が必要であると公表されていますが、実際には3分の1程度は必要になってきます。

補足④審査について

審査の方法は、金融機関によって少しずつ異なります。
また、融資担当者・融資責任者によっても変わってきます。
その人の過去の経歴や人間性・創業計画書の内容・現在の資産状況などが審査で見られるポイントになりますが、融資担当者にどこまで情報を伝えられてどこまで理解してもらえているかにもよります。
どちらの方が審査が通り易いというのは特にありません。

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