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社債とは何か

社債(しゃさい)とは、企業が資金調達を行う目的で、投資家から払い込まれる資金に対して発行する有価証券のことを意味します。
長期の資金調達を行う方法として、株式の発行や銀行等の金融機関からの借入などの方法がありますが、社債を発行する方法もあります。

かつて社債券の現物が発行(起債)されていた頃は、投資家から見れば「借用証書」の意味がありました。
ところが平成17年に会社法が成立し、株式については株券不発行が原則とされ(会社法214条)、これに歩調を合わせる形で、社債についても社債券不発行が原則とされました(会社法676条)
そのため、今では紙ベースの社債券が発行されるケースはほとんどありません。

社債は英語で「bond」や「corporate bond」といいます。

社債は中小企業でも発行することができますが、中小企業の主たる資金調達の方法は銀行等の金融機関からの借入なので、帝国データバンクの情報によると中小企業の利用率は約5%となっているようです。

投資家から見た社債への投資

投資家から見ると、社債は投資商品の1つです。
株式への投資やM&A(Mergers and Acquisitions)はハイリスク・ハイリターンであり、国債への投資はローリスク・ローリターンであると言われています。
この点、社債への投資は、(格付けにもよりますが)ミドルリスク・ミドルリターンであると言われています。
「株式投資ほどのリスクは負いたくないが、国債投資以上のリターンが欲しい」
という投資家にとっては、社債はちょうどよい投資商品です。
コラム「M&Aとは」

社債はその安全性により格付けが決定されます。
社債の格付けを行う機関は世界中にいくつか存在します。
海外では、スタンダード&プアーズ(Standard & Poor’s)(S&P)、ムーディーズ(Moody’s)、フィッチ・レーティング(Fitch Ratings)などの格付会社があります。
日本では、格付投資情報センター(R&I)や日本格付研究所(JCR)などの格付会社があります。

格付投資情報センター(R&I)の発行体格付け基準は下記のようになっており、AAAが最も安全性が高く、Dが最も安全性が低くなっています。

AAA(トリプルエー)
・・・信用力は最も高く、多くの優れた要素がある。
AA(ダブルエー)
・・・信用力は極めて高く、優れた要素がある。
A(シングルエー)
・・・信用力は高く、部分的に優れた要素がある。
BBB(トリプルビー)
・・・信用力は十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある。
BB(ダブルビー)
・・・信用力は当面問題ないが、将来環境が変化する場合、十分注意すべき要素がある。
B(シングルビー)
・・・信用力に問題があり、絶えず注意すべき要素がある。
CCC(トリプルシー)
・・・信用力に重大な問題があり、金融債務が不履行に陥る懸念が強い。
CC(ダブルシー)
・・・発行体のすべての金融債務が不履行に陥る懸念が強い。
D(シングルディー)
・・・発行体のすべての金融債務が不履行に陥っているとR&Iが判断する格付。

AA格からCCC格については、上位格に近いものにプラス、下位格に近いものにマイナスの表示をすることがあります。

なお、個人向け社債を多く発行しているソフトバンクグループ㈱は、日本では格付投資情報センター(R&I)の格付けでは、「A-」となっています(第55回無担保社債発行時)

社債の発行のパターン

借入金の場合は、金銭消費貸借契約書や借用書の金額と同額の資金調達額になります。
しかし、社債の場合は、社債額面金額と発行価額(資金調達額)は必ずしも一致しません。
そのため、社債の発行にあたっては、発行価額を決定する必要があります。

社債額面金額と同額の平価発行(へいかはっこう)
→社債額面金額=社債発行価額

社債額面金額を上回る打歩発行(うちぶはっこう)
→社債額面金額<社債発行価額

社債額面金額を下回る割引発行(わりびきはっこう)
→社債額面金額>社債発行価額
(割引発行される社債は「ゼロクーポン債」と呼ばれることもあります)

ソフトバンクグループ㈱が発行する個人向け社債は、払込金額は「各社債の金額100円につき金100円」のようになっており、平価発行です。
また、一般的な個人向け国債は、販売価格は「額面金額100円につき100円」のようになっており、平価発行です。
このように、個人向け社債や国債については、プロの機関投資家ではなく一般国民が購入することが多いからなのか、理解しやすい平価発行による方法が採用されていることが多くなっています。

ただし、それ以外の場合には、割引発行による方法も多く採用されています。
このような社債の割引発行や買入償還といった問題は日商簿記の2級で出題され、処理がややこしいので苦手にしている方も多いかもしれません。

社債の平価発行の会計処理

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取引の内容

発行価格:額面金額100円につき100円
発行口数:10,000口
金利:2%
償還期限:3年

発行時の仕訳

借方貸方
預金1,000,000社債1,000,000

利払時の仕訳

借方貸方
社債利息20,000預金20,000

※3年間利払いがあります。

償還時の仕訳

借方貸方
社債1,000,000預金1,000,000

社債の割引発行(ゼロクーポン債)の会計処理

取引の内容

発行価格:額面金額100円につき97円
発行口数:10,000口
金利:1%
償還期限:3年

発行時の仕訳

借方貸方
預金970,000社債1,000,000
社債発行差金30,000

利払時の仕訳

借方貸方
社債利息10,000預金10,000

*3年間利払いがあります。

期末時の仕訳

借方貸方
社債発行差金償却10,000社債発行差金10,000

*毎期均等償却した場合。

償還時の仕訳

借方貸方
社債1,000,000預金1,000,000

社債発行費

社債発行費とは何か

企業が社債を発行する際には様々な費用がかかることとなり、それらの費用は社債発行費と呼ばれます。
社債発行費とは、社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、金融商品取扱業者の取扱手数料、目論見書・株券等の印刷費、変更登記の登録免許税、その他株式の交付等のため直接支出した費用を意味します。

社債発行費の会計処理(仕訳)

会計上、社債発行費は、原則として支出時に費用(営業外費用)として処理します。
ただし、社債発行費を繰延資産に計上することができます。
この場合には、社債の償還までの期間にわたり利息法により償却しなければならないとされています。
なお、償却方法については、継続適用を条件として、定額法を採用することができます。

社債発行費の税務処理

税務上も社債発行費は、繰延資産に該当することとなります(法2条24号、法令14条)
ただし、税務上の繰延資産ではなく、会計上の繰延資産となるため、任意償却とされています。

社債発行費の消費税の処理

先ほど見たように、社債発行費の内容は、広告費・取扱手数料・印刷費などであり、消費税が課されるものが多くなっています。
そのため、社債発行費等の繰延資産に含まれる課税仕入れ等に係る対価の額は、その課税仕入れを行った日の属する課税期間において仕入れに係る消費税額の控除をすることとなります(基通11-3-4)
また、個別対応方式により仕入控除税額を計算する場合には、課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものとなります。
(国税庁:質疑応答事例「新株発行費用等についての仕入税額控除」)

コラム「繰延資産とは。償却期間と償却方法」

社債の取得者側の会計処理

満期まで所有する意図をもって保有する社債その他の債券(満期保有目的の債券)は、取得原価をもって貸借対照表価額とします。ただし、債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければなりません(金融商品会計基準16)。

社債などの有利子負債の分析

借入金や社債などの有利子負債が多いと返済額が多くなるので、資金繰りが苦しくなります。
そのため、企業の安全性を検討するには、負債比率、有利子負債比率、有利子負債月商倍率、有利子負債EBITDA倍率などを同業他社と比較して分析をします。

M&Aのデューデリジェンスにおいては、有利子負債の比率が適切であるかというのが、事業買収後にその事業を経営していく上で重要なポイントになります。
さらに言えば、簿外債務(隠れ負債)や偶発債務が存在しないかというのを確認しなければいけません。
負債が過少に計上されているということは利益が過大に計上されているということでもあり、簿外債務があると財政状態のみならず経営成績も歪められていることになります。
M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)では、この簿外債務がないかどうかを確かめることがとても重要になります。
コラム「借入金の財務デューデリジェンスのチェックリスト」

財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンス

M&Aの調査である財務デューデリジェンス(財務DD)は財務諸表監査の知識と経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼する方が安心です。
税務デューデリジェンス(税務DD)は税の専門家である税理士に依頼するのがよいでしょう。
税理士法人MFMではM&Aのデューデリジェンスの経験が豊富な公認会計士・税理士の有資格者によるデューデリジェンスを行っています。
どれだけ小さい案件のM&Aであっても四大監査法人出身の公認会計士がデューデリジェンス業務を監督しているため、安心してお任せ頂けます。
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