税理士法人MFM(四大監査法人出身の公認会計士在籍)
M&Aにはいろいろな落とし穴がある
M&Aで事業を取得して対価の支払が終了した後に、「過去に行政処分を受けている会社だった」「逮捕歴や前科がある社長で法律に違反する行為を何とも思わないような会社だった」「勝ち目のない訴訟を抱えていた」「簿外債務(隠れ負債)があった」「実際の収益性は直前の決算書の数値よりもずっと低かった」といったような事が判明するなど、M&Aには様々な落とし穴があります。
その落とし穴はどうにも修復できないくらい大きいことがあり、またM&Aを実行してしまったら後戻りすることはできません。
買収対象企業の企業価値の算定やシナジー効果(相乗効果)の算定よりも前に検討しなければならないことがM&Aにはあります。
ただしM&Aで難しいのは、実際にデューデリジェンスを実施してみないと、それらのリスクに気付くことができないという点です。
日常業務で忙しい経理担当者が片手間に検討したり、顧問税理士に申告書と決算書を少し見てもらうくらいでは、残念ながらそのような落とし穴に気付くことはできません。
このコラムでは、行政処分を受けた業者をM&Aで買ってしまうリスクを低減するため、行政処分【ネガティブ情報】の調べ方について見ていきます。
行政処分の基礎知識
M&Aにおけるデューデリジェンスで行政処分をどこまで調査することができるかを理解するためには、まずは行政処分の意味や種類、そして公表されるのかどうかを知る必要があります。
行政処分の定義
行政処分(ぎょうせいしょぶん)とは、行政機関が法律の規定によって公的な権力を行使し処罰することを意味します。
処罰するほどでもない場合は指導という形で行政指導がなされることもあります。
行政処分の種類
行政処分と一口に言っても、一般的には処分のレベルに応じて複数の種類かに分かれています。
例えば、戒告、業務改善命令、課徴金(反則金)、業務停止、登録抹消(免許取消)などの種類があります。
戒告(かいこく)は文書による通知であるため最も軽い行政処分であり、登録抹消(免許取消)をされてしまうと事業が継続できなくなるため最も重い行政処分になります。
それでは、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)を実施する公認会計士を例に、どのような行政処分がなされるか見てみましょう。
公認会計士が公認会計士法に違反した場合には、内閣総理大臣は、公認会計士法29条に掲げる懲戒の処分をすることができます(公認会計士法31条1項)。
ただし、内閣総理大臣は公認会計法による権限(政令で定めるものを除く。)は金融庁長官に委任することができるため(公認会計士法49条の4)、実際のところは公認会計士を監督する行政は金融庁になります。
この公認会計士法29条では、公認会計士に対する懲戒処分は、次の3種類とされています。
一 戒告
二 二年以内の業務の停止
三 登録の抹消
サービス案内「デューデリジェンス」
行政処分を下す行政機関
先ほどの例の公認会計士の場合は管轄する行政機関は金融庁でしたが、業種により管轄する行政機関が異なることから、M&Aの買収先企業の業種によってどの行政機関が管轄しているのかが異なってきます。
具体的な業種とその業種を管轄する行政機関を簡単にまとめてみましたが、様々な行政機関がありまた地方自治体も絡んでいることが見て取れると思います。
農業、漁業
農林水産省
鉱業
経済産業省
建設業
国土交通省
食品製造業
消費者庁、各都道府県
酒類製造業
国税庁、各都道府県
医薬品製造業
厚生労働省、各都道府県
自動車製造業
経済産業省
電気業、ガス業
経済産業省
水道業
厚生労働省、各都道府県
情報通信業
総務省
運輸業
国土交通省(運輸局)
金融業
金融庁
不動産業
国土交通省、各都道府県
宿泊業
厚生労働省、各都道府県
飲食店
厚生労働省、各都道府県
理容業、美容業
厚生労働省、各都道府県
学校
文部科学省、各都道府県
医療、福祉
厚生労働省、各都道府県
行政処分は公表されるのか
令和元年12月に、金融庁はかんぽ生命に対し、保険商品に係る保険募集や保険契約の締結を停止(業務停止)させるとともに業務改善命令を保険業法第132条第1項に基づいて出しました。
行政処分がなされたことを耳にすると「こんな有名な企業が今までこんな悪い事をしてきたのか」とビックリさせられることもあると思います。
しかし、一般人が耳にする行政処分は実際に存在する行政処分の一部のあり、すべての行政処分が公表されているわけではありません。
各行政機関において公表基準が設けられ、重大な違反や悪質な違反があったものは公表されますが、軽微な違反であれば公表されない取扱いになっており調べることができない事もあります。
行政処分の公表の期限
いったん公表された行政処分でも永遠に掲示され続けるという訳ではありません。
各行政機関により公表期限が設けられている場合、年月が経過するとその情報が削除(非公表と)されてしまいます。
例えば、国土交通省は不動産業を管轄しており、「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」において宅地建物取引業者(不動産屋)への過去の行政処分を検索することができます。
重要事項説明書の記載不備があり行政処分がなされたものもこちらで検索可能です。
しかしながら、実際に検索してもらうと分かりますが、処分年月日を指定する画面で過去5年間しか調べることができなくなっています。
行政処分の調査は可能か不可能か
これまで見てきたように、行政処分は①各行政機関により公表され②すべての行政処分が公表される事はなく③時が経過し公表期限を過ぎると削除されてしまうという特性があります。
そのため、すべての行政処分が年代別に網羅されているような一覧表があれば一番よいのですが、そのような一覧は残念ながらありません。
軽微な違反で公表されないような行政処分については世間にはほとんど知られることがないため、調査で発見することは困難でしょう。
遠い過去の行政処分で公表期限を過ぎてしまった場合、その事実を容易に調べることができなくなることがあります。
ただし、過去の行政処分でも重大な違反や悪質な違反がなされたようなものはついては、適切な調査を行えば発見できるため、企業調査で発見できる可能性があります。
企業調査の目的
M&Aを実施する際にデューデリジェンスを実施するかどうか悩まれている企業には、まずは買収対象会社の企業調査を実施することをおすすめしています。
例えば200万円支払って財務DDと法務DDを実施し、そのデューデリジェンスの結果として過去に行政処分を受けていたことが判明しM&Aを中止することとなった場合、その中止するという結論は出すために200万円のコストがかかってしまいます。
もし、会社が過去に行政処分を受けていたことが企業調査によって判明した場合、おおよそ10分の1の料金で済みます。
税理士法人MFMでは、多くの情報のソースと調査のノウハウを生かしてM&Aの企業調査を行っています。以下のようなM&Aのリスクを調査することができます。
□会社の過去の行政処分の有無
□社長の過去の逮捕歴や前科の有無
□会社や社長が抱えている又は抱えていた訴訟の有無
□会社の所在地や役員の異常な異動の有無
財務デューデリジェンスを得意とされている公認会計士の先生や、税務デューデリジェンスを得意とされている税理士の先生からのご依頼もお受けしています。
デューデリジェンスを実施している途中において、何か怪しい感じがすると感じられた際にはご相談ください。
クライアント様の情報を頂くことなく買収対象会社の企業調査を実施させて頂きますので、同業ですが安心してお任せ頂けます。
M&Aの場面のみに限らず、これから取引をすることを検討されている方、ビジネスパートナーを組む予定の方、個人的な事情で依頼されたい方などもご利用頂けます。
サービス案内「企業調査」
財務デューデリジェンスでも逮捕歴の兆候を掴むことはできる
通常の財務デューデリジェンス(財務DD)を実施する中でも、会社の過去の行政処分、社長の過去の逮捕歴、社長や会社が抱えている又は抱えていた訴訟などについては、財務諸表を分析する過程においてその兆候を掴むことができることがあります。
ただし、常にそのようなリスクがあることを念頭にデューデリジェンスの手続を進めていないと、その兆候を見落としてしまうおそれが高いでしょう。
例えば、マネジメントインタビューはその兆候を掴むための方法の1つであり、代表取締役社長や経営幹部と会って話しをすることによりその社長や会社のあやしい体質が分かる可能性があります。
ただし、人生経験を多く積んでいる人でもだまされてしまう人がいるように、外見や少し話しただけでは人間は区別がつかない場合も多くあります。
詐欺師ほど人当たりがよく魅力的で人をたらしこむ技術があると言われています。
特にM&Aを積極的に推進しているような会社の場合、M&Aを実施することばかりが優先されてしまい、会社が行政処分を受けていたなどのリスクの兆候を見逃してしまいます。
そのようなことを防止する意味でも、M&Aは第三者が関り客観的に判断することが重要なのです。
税理士法人MFMグループは大阪、東京を拠点としていますが、関西(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)や関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)のみならず、全国で調査を実施しています。
税理士法人MFM
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門