財務デューデリジェンス報告書のひな型・書き方

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クライアントから財務デューデリジェンス(財務DD)の依頼を受けた場合、今までにM&Aの経験がなければどのような手続を実施すればよいか分からないとういこともありますが、財務デューデリジェンス報告書の作成方法が分からずせっかく依頼を受けたのに受注をお断りするしかないということが起こってしまいます。
長いお付き合いのあるクライアントからの簡単な財務デューデリジェンスの依頼であればオリジナルの数ページの報告書で足りるかもしれませんが、比較的大きな会社からの依頼や事業承継・引継ぎ補助金を活用したM&Aの場合はしっかりとした成果物が要求されるため20ページ以上の財務デューデリジェンス報告書の作成が要求されることが多いと思います。
(上場会社が行う大型M&Aの場合は財務デューデリジェンス報告書が100ページ以上になることもあり、人材やノウハウが豊富な大手監査法人などが実施することとなるため、このコラムでは大型M&Aは想定していません。)
このコラムでは、中小企業が実施する小規模ないし中規模のM&Aを想定し、20~30ページ程度の財務デューデリジェンス報告書を作成する際のひな型(テンプレート)・書き方について説明しています。

税理士法人MFMの財務デューデリジェンス報告書のひな型

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出典、ページ数

この財務デューデリジェンス報告書は、税理士法人MFMが使用しているひな型(テンプレート)です。
基本的なコンテンツのみの構成でページ数は23ページです。
下記のコンテンツには含まれていない組織図、商流図、会計方針、経理体制、使用システム、製品別の分析、製造原価の分析、キャッシュ・フローの分析などを入れ込むと30ページ以上に膨らみます。

コンテンツ

表紙
初めに

・利用上の制限
・業務範囲

Contents(コンテンツ紹介)
1.Executive summary(エグゼクティブ・サマリー)
2.Transaction overview(本案件の概要及び対象会社の概要)

・本案件の概要
・株主及びグループ会社の概要
・対象会社の概要
・対象会社の業績の概要

3.Quality of net assets(資産性分析)

・資産の推移
・負債の推移
・実態純資産

4.Quality of earnings(収益性分析)

・損益計算書の推移
・販売費及び一般管理費の推移
・正常収益力の分析

5.Tax review(タックス・レビュー)
6.Appendices(付録)

報告書を作成する方法、所要日数

財務デューデリジェンス報告書のひな型(パワーポイントの元データ)をお渡ししますので報告書作成の時間を大きく削減できますし、パワーポイントに慣れていなくても財務デューデリジェンス報告書を簡単に作成できるようになっています。
有料となっており料金は10万円(税抜)です。
なお守秘義務の問題もありますが、デューデリジェンスで失敗し責任問題にならないよう、M&A案件ごとの注意すべき点も可能な範囲でお伝えさせていただきます。

無料の財務デューデリジェンス報告書のひな型

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出典、ページ数

一般財団法人日本的M&A推進財団という会社が無料で財務デューデリジェンス報告書のひな型を公開してくれています。
ページ数は24ページです。

コンテンツ

・表紙
・注意事項
・企業概要① 株主構成
・企業概要② 会社概要・企業変遷と役員構成
・企業概要③ 組織図
・企業概要④ 経理フロー(売上)
・企業概要⑤ 経理フロー(材料・外注・給与)
・資産価値の検証① 3期比較貸借対照表
・資産価値の検証② 直前期の再評価B/S
・資産価値の検証③ 再評価の詳細(流動資産)
・資産価値の検証④ 再評価の詳細(流動資産)
・資産価値の検証⑤ 再評価の詳細(流動資産)
・資産価値の検証⑥ 再評価の詳細(固定資産)
・資産価値の検証⑦ 再評価の詳細(負債)
・資産価値の検証⑧ 再評価の詳細(負債)
・収益性の検証① 損益計算書推移
・収益性の検証② 販売費・一般管理費の推移
・収益性の検証③ 製造原価の推移
・社員名簿と報酬体系
・まとめ
・経営者インタビュー(抜粋)

自分で報告書を作成する方法、所要日数

このひな形をもとに財務デューデリジェンス報告書を作成しようとすると、このひな形はPDFで公開されているため、自分でパワーポイントやエクセルで同じような報告書のひな型を作成する必要があります。
パワーポイントに慣れている方であれば1日で作成できるかもしれませんが、パワーポイントに慣れていなければ2~3日程度かかってしまうかもしれません。

財務デューデリジェンス報告書の書き方

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出典、ページ数

「M&A財務デューデリジェンス入門 手順と報告書の書き方」という書籍において、ひな型はありませんが書き方を紹介してくれています。
この書き方に従って報告書を作成すると少なくとも25ページくらいのボリュームになると思います。

コンテンツ

(1)会社の概要

・過年度の決算概要
・連結財務諸表
・役員や株式の状況
・グループ会社の資本関連図
・商流図
・会計方針の理解
・物件や施設の概要
・関連当事者との取引の概要

(2)エグゼクティブサマリー(重要事項の要約)

・実態純資産の分析結果の報告
・正常収益力の分析結果の報告
・キャッシュ・フロー分析結果の報告
・その他バリュエーションに影響を与える可能性がある発見事項の報告
・譲渡契約書作成において考慮すべき事項の報告

(3)調査結果の詳細

・貸借対照表分析
・損益計算書分析

(4)その他

・実施した調査の概要(調査時間、調査範囲、免責条項)
・参考資料

「M&A財務デューデリジェンス入門 手順と報告書の書き方」より引用。

自分で報告書を作成する方法、所要日数

この書籍をもとに財務デューデリジェンス報告書を作成しようとすると、この書籍ではひな型ではなく書き方の紹介をしているので、他の様々な情報を取り寄せながら自分でパワーポイントやエクセルで報告書を創作する必要があります。
ひな型の作成だけでおそらく4~5日くらいはかかってしまうでしょう。

最後に

財務デューデリジェンス報告書の基本的な内容はどれも似ているのですが、コンテンツの切り口やタイトルがかなり異なっています。
20枚以上の報告書をこだわりを持って作り出したら何日あっても終わりません。
財務デューデリジェンス(財務DD)は責任が極めて重い業務であるため、会計の専門家であっても初めて実施されるのであれば調査手続の実施にしっかりと注力しなければ、万が一の際には多額の責任問題につながりかねません。
調査手続に注力し問題なく業務を成し遂げるためにも、最初に作成する財務デューデリジェンス報告書は何かのひな型にそのまま乗っかった形にするのがいいでしょう。
そして2回目以降は、さらによい財務デューデリジェンス報告書を作成できるように自分でアレンジされることをお勧めします。
また業務の責任の重さの観点から、あまりの安値での財務デューデリジェンス業務の受注は避けた方がよいでしょう。

大阪・東京の税理士法人MFMグループ
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門