登記簿謄本は情報の宝庫
会社の信用調査で登記簿謄本を取ることがあります。
登記簿謄本の取得・検討は信用調査の入口ですが、実は情報の宝庫なのです。
さっと流し読みしてしまったがために多額の売掛金が貸倒れてしまうおそれもあります。
上場会社にもなると登記簿謄本が数十ページになることもあり、そのすべてを説明することはできませんが、基本的な株式会社の登記簿謄本の見方を説明していきます。
なお、登記簿謄本の読み方は「とうきぼとうほん」です。
商号区
会社法人等番号
『〇〇〇〇-〇〇-〇〇〇〇〇〇』
のように12桁の会社法人等番号が記載されています。
会社法人等番号とは、登記所が商業登記、法人登記の登記記録1件ごとに記録する会社、法人などの識別番号です。
商号
『株式会社〇〇、または〇〇株式会社』
のように会社名が記載されています。
なお、定款で「〇〇Co.,Ltd」のように英語表記を定めていたとしても、すべてを英語表記にすることはできません。
商号譲渡人の債務に関する免責
『当会社は令和〇〇年〇〇月〇〇日商号の譲渡を受けたが、譲渡会社である株式会社○〇(事業上使用される名称〇〇)の債務については責に任じない。』
と記載されているケースが稀にあります。
M&A(Mergers and Acquisitions)で事業譲渡を行う場合、譲受会社が譲渡会社の商号を継続使用することがよくあります。
事業譲渡契約書においては、引き受けると定めた譲渡会社の債務のみが譲受会社に移転することになっています。
しかし実際には、譲受会社が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負うことになってしまいます(会社法22条)。
つまり、このままではもし隠れ債務があった場合、譲受会社は想定外の債務を負担するリスクがあります。
そのため、そのようなリスクを避ける目的から、譲渡会社の債務を弁済する責任を負わない旨の登記(免責登記)をすることが可能となっています。
コラム「M&Aとは」
本店
『東京都〇〇区〇〇 ○丁目○番○号』
本店の住所が記載されます。
会社の公告方法
『官報に掲載してする。』
にように記載されています。
株式会社は、株主総会後に貸借対照表(大会社は貸借対照表に加えて損益計算書)を公告しなければならないことになっています(会社法440条)。
そのため、どのような方法で公告するかがここに記載されます。
いくつかの公告の方法があり、電子公告の場合は『当会社の公告は、電子公告により行う。』のように記載されます。
会社成立の年月日
『令和〇年〇〇月〇〇日』
会社設立日が記載されます。
ホームページなどがなく社歴が不明な会社であっても、ここを見ると社歴が何年あるかが分かります。
目的区
『1.経営コンサルティング業務
2.不動産の売買、賃貸借及び仲介業務
3.前各号に付帯する一切の業務』
上記のように、定款で定められた目的がそのまま記載されています。
目的区を見ることにより、会社の行っている事業の内容が分かります。
今は撤退したが過去に行っていた事業が謄本に記載されたままのケースもあります。
会社の信用調査やデューデリジェンスの調査を行う際には、調査対象会社の過去の実態を知る上でもここのチェックは必要です。
コラム「デューデリジェンスとは」
株式・資本区
単元株式数
『〇〇株』
株式会社は、その発行する株式について、一定の数の株式をもって1個の議決権を行使することができる1単元の株式とすることができます(会社法188条)。
この場合、単元株式数を登記する必要があります。
発行可能株式総数
『〇〇株』
株式会社は、発行可能株式総数は定款の絶対的記載事項となっており、会社の設立時に必ず定める必要があります(会社法37条)。
この発行可能株式総数は謄本にも記載されます。
発行済株式の総数並びに種類及び数
『発行済株式の総数 〇〇株
普通株式 〇〇株
優先株式 〇〇株』
株式会社は種類株式を発行することができ、その場合には謄本に記載されます。
株券を発行する旨の定め
『当会社の株式については、株券を発行する。』
現在の会社法では、 株券不発行が原則となっています(会社法214条)。
そのため、例外的に株券を発行している会社は謄本にその旨が記載されます。
資本金の額
『金〇〇万円』
株式会社は資本金を定める必要があり(会社法27条)、その資本金の額が謄本に記載されます。
なお、資本準備金は謄本に記載されないため、非上場会社では決算書を見ない限りは外部の人はその存在が分かりません。
株式の譲渡制限に関する規定
『当会社の株式の譲渡については取締役会の承認を得なければならない。』
株式の譲渡制限がある会社は謄本に記載されます。
役員区
取締役
『取締役 〇〇〇〇』
すべての取締役の氏名が記載されます。
代表取締役
『東京都〇〇区〇〇 ○丁目○番○号
代表取締役 〇〇〇〇』
すべての代表取締役の住所・氏名が記載されます。
共同代表であれば代表取締役が複数名存在することになります。
監査役
『監査役 〇〇〇〇』
監査役の氏名が記載されます。
監査役の監査の範囲
『監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある。』
公開会社でない株式会社は、監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定することができます(会社法389条)。
この場合、その旨の記載がされます。
取締役等の会社に対する責任の免除に関する規定
『当会社は、会社法第426条第1項の規定により、任務を怠ったことによる取締役(取締役であった者を含む)の損害賠償責任を、法令の限度において、取締役会の決議によって免除することができる。』
取締役等の役員は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(会社法423条)。
ただし、当該取締役等が善意でかつ重大な過失がないときは、株主総会の特別決議によって、その責任を一部免除することができます(会社法第425条)。
この責任の一部免除がなされている場合はその旨の記載がされます。
会社履歴区
吸収合併
『令和〇年〇月〇日東京都〇〇区〇丁目〇番〇号株式会社〇〇を合併』
会社が過去に組織再編を行った場合、ここに記載されます。
企業担保権区
業績が厳しい企業は、銀行などの金融機関から借入を行う際に担保を求められることがあります。
担保を設定していれば、他の債権者に優先して債権を回収することができるからです。
これからお金を貸そうとしている会社から見ると、既に担保を設定している会社がいるのかどうかというのが重要になります。
このように担保設定の影響力は大きいため、担保は登記しなければその効力が生じないこととなっています。
会社状況区
取締役会設置会社に関する事項
『取締役会設置会社 令和〇年〇〇月〇〇日登記』
公開会社などでは取締役会を設置しなければなりませんが(会社法327条)、中小企業では取締役会がない会社も多く存在します。
取締役会がある会社かどうかはここを見れば分かります。
監査役設置会社に関する事項
『監査役設置会社 令和〇年〇〇月〇〇日登記』
監査役はすべての会社で必要ではなく、大会社であるのか、公開会社であるのか、取締役会設置会社であるのか、会計参与がいるのか、により監査役が必要がどうかが決まります。
また、中小企業では任意で監査役を置いている会社もあります。
監査役がいてる会社かどうかはここを見れば分かります。
登記記録区
『平成元年法務省令第15号附則第3項の規定により平成〇〇年〇〇月〇〇日移記』
昔は登記簿謄本は法務局に紙で保存されていましたが、平成元年の法務省令により登記簿謄本はコンピューター化されることとなりました。
しかし、法務省令が出ても日本全国の法務局がすべての謄本を一度にコンピューター化することは不可能だったで、法務局ごとにコンピューター化の時期は少しずつ異なっています。
ここには管轄の法務局によって謄本がコンピューター化された日付が記載されています。
財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンス
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税理士法人MFM
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門