yakuin-taishoku-irou-hikiatekin

役員退職慰労引当金とは何か

役員退職慰労引当金とは、会社の役員(取締役・監査役・執行役等)の将来における退職慰労金の支払に備えて設定される引当金です(監査・保証実務委員会実務指針第42号「租税特別措置法上の準備金及び特別法上の引当金又は準備金並びに役員退職慰労引当金等に関する監査上の取扱い」)。

役員退職慰労引当金の会計処理

会計上の性格

役員退職慰労金は、退職する役員の在任期間中の役務の提供に関して支払われるものであり、また、その支給は株主総会による承認決議を前提とするため、株主総会の承認決議前の段階では、法律上は債務ではありません。
つまり、会計上は企業会計原則の注解18に示されるいわゆる負債性引当金の性格を有するものとされます。
そのため、以下の事項を満たす場合には、各事業年度の負担相当額を役員退職慰労引当金に繰り入れることとされています。
(ア)役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき(在任期間・担当職務等を勘案して)支給見込額が合理的に算出されること
(イ)当該内規に基づく支給実績があり、このような状況が将来にわたって存続すること(設立間もない会社等のように支給実績がない場合においては、内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測される場合を含む。)

(企業会計原則 注解 注18)
【注18】 引当金について
将来の特定の費用又は損失であつて、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。
製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当する。
発生の可能性の低い偶発事象に係る費用又は損失については、引当金を計上することはできない。

仕訳

繰入時の仕訳
借方貸方
役員退職慰労引当金繰入額××役員退職慰労引当金××
戻入時の仕訳
借方貸方
役員退職慰労引当金××役員退職慰労引当金戻入額××

M&A(Mergers and Acquisitions)の財務デューデリジェンス(財務DD)において、役員退職慰労引当金が適切に計上されているかを確認することになります。
計上されていない場合は簿外債務(隠れ負債)が存在してしまっていることになります。
コラム「退職給付引当金の財務デューデリジェンスのチェックリスト」

役員退職慰労引当金の税務上の取扱い

先ほど述べたように、役員退職慰労金は、株主総会の承認決議前の段階では法律上は債務ではありません。
税務上は、債務の確定したもののみ損金(必要経費)として計上するという考えの債務確定主義が原則的な損金(必要経費)の計上基準となっています。
そして、役員退職慰労引当金の損金算入を認める特段の規定もありません。
そのため、役員退職慰労引当金の繰入額は損金とはなりません。
コラム「債務確定主義とは。法人税法と所得税法における要件。」

財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンス

M&Aの調査である財務デューデリジェンス(財務DD)は財務諸表監査の知識と経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼する方が安心です。
税務デューデリジェンス(税務DD)は税の専門家である税理士に依頼するのがよいでしょう。
税理士法人MFMではM&Aのデューデリジェンスの経験が豊富な公認会計士・税理士の有資格者によるデューデリジェンスを行っています。
どれだけ小さい案件のM&Aであっても四大監査法人出身の公認会計士がデューデリジェンス業務を監督しているため、安心してお任せ頂けます。
簡易的な財務DDや税務DDを20万円~で実施しています。
サービス案内「簡易財務デューデリジェンス・簡易税務デューデリジェンス」

税理士法人MFM
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門