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債務確定主義とは何か

債務確定主義とは、債務の確定したもののみ損金(必要経費)として計上するという考え方であり、税法における原則的な損金(必要経費)の計上基準のことです。
その事業年度(年)に支払った場合でも、債務の確定していないものはその事業年度(年)の損金(必要経費)になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その事業年度(年)に債務が確定しているものはその事業年度(年)の損金(必要経費)になります。

法人税法における債務確定主義と損金計上の要件

法人税法第22条の規定

法人税では、法人税法22条が債務確定主義の根拠条文とされています。
法人税法第22条第3項にはこのように書かれています。

内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、次に掲げる額とする。
一  当該事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額
二  前号に掲げるもののほか、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額
三  当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの

二号の括弧書きにおいて、「債務の確定しないものを除く」とあり、これが債務確定主義を表しています。

国税庁タックスアンサ-No5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」の規定

法人税法の条文は少し分かりづらいので、一般の方は国税庁が出しているタックスアンサーの方が分かりやすいかもしれません。
国税庁タックスアンサ-No5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」にはこのように書かれています。

各事業年度の所得の金額の計算上、当該事業年度の損金の額に算入される金額は、別段の定めのあるものを除き、1売上原価等の額、2販売費、一般管理費その他の費用の額、3損失の額とされています。
このうち、「販売費、一般管理費その他の費用」については、当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用のうち、償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものに限られています。
この償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものをいいます。

(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること。
修繕費を例にとると、建物等の修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、かつ金額の見積りが客観的にでき得る状況にあれば、上記の3つの要件を満たし未払金等として計上できることになります。

(1)において、「債務が成立していること」とあり、これが債務確定主義を表しています。

所得税法における債務確定主義と必要経費計上の要件

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所得税法第37条(必要経費)の規定

所得税では、所得税法37条が債務確定主義の根拠条文とされています。
所得税法第37条第1項にはこのように書かれています。

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

かなり長い条文ですが、文末のほうにおいて「債務の確定しないものを除く」とあり、これが債務確定主義を表しています。

国税庁タックスアンサーNo2210「やさしい必要経費の知識」の規定

所得税法の条文も少し分かりづらいので、一般の方は国税庁が出しているタックスアンサーの方が分かりやすいかもしれません。
国税庁タックスアンサ-No2210「やさしい必要経費の知識」にはこのように書かれています。

必要経費となる金額は、その年において債務の確定した金額(債務の確定によらない減価償却費などの費用もあります。)です。
つまり、その年に支払った場合でも、債務の確定していないものはその年の必要経費になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その年に債務が確定しているものはその年の必要経費になります。
この場合の「その年において債務が確定している」とは、次の三つの要件を全て満たす場合をいいます。
(1) その年の12月31日までに債務が成立していること。
(2) その年の12月31日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) その年の12月31日までに金額が合理的に算定できること。

債務確定主義と引当金の関係

引当金とは、将来において特定の費用又は損失が発生することが見込まれる場合に、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として繰入れるとともに、貸借対照表の負債の部(または資産の部の評価勘定)に計上するものです。

会計上、計上すべき引当金は、企業会計原則「注解18」に定められており次の4要件が必要とされています。
1.将来の特定の費用または損失であること
2.発生が当期以前の事象に起因すること
3.発生の可能性が高いこと
4.金額を合理的に見積ることが可能であること

また、企業会計原則「注解18」においては、製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当するとされています。

このように、引当金は債務の確定とは関係なく計上されるものです。
そのため、引当金は債務確定主義の例外的な取り扱いになっています。

コラム「貸倒引当金の繰入と戻入の仕訳」
コラム「貸倒引当金の計算方法」

債務確定主義と簿外債務(隠れ負債)

中小企業のM&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)において、必ず検討しなければならない項目の1つが退職給付引当金です。
会計上は、退職給付債務は退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算することが求められます。
しかし、税務上は、債務確定主義に基づき、退職給与引当金を計上したとしても損金(必要経費)として認められていないため、計上されていないことが多くなっています。
このように会計と税務で処理が異なっているため、会計側から見ると簿外債務(隠れ負債)が存在していることになります。
コラム「デューデリジェンスとは」
コラム「M&Aのデューデリジェンスにおける簿外債務(隠れ負債)の発見方法」

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