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財務デューデリジェンス(財務DD)によるM&Aのリスクマネジメントが成功のポイント。
大阪・東京の税理士法人MFMグループ

簿外債務(隠れ負債)とは何か

簿外債務(ぼがいさいむ)とは、その名のとおり会計帳簿の外にある(記載されていない)債務のことです。
負債は貸借対照表の貸方に計上されていますが、簿外債務(隠れ負債)は貸借対照表に出てきません。
簿外負債、隠れ債務とも言われています。

英語では「Off-the-book Liabilities」などと言われます。
隠れた宝石(hidden gems)を探すためにM&Aを行うのですが、隠れた負債(hidden debt)を掴まされてしまっては、意味がないどころが会社にとって重荷を背負うことになってしまいます。

負債が過少に計上されているということは利益が過大に計上されているということでもあり、簿外債務があると財政状態のみならず経営成績も歪められていることになります。
M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)では、財務諸表には出ていない簿外債務がないかどうかを確かめることがとても重要になります。
このコラムでは、簿外債務の発見方法についても記載しています。

中小企業で簿外債務(隠れ負債)がよくある理由

上場企業は監査法人の監査を受けており、その財務諸表は一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(GAAP)に準拠して適正に表示されているというお墨付きをもらっていますが、非上場企業では、そのような財務諸表監査制度はないためほとんどの企業で何らかの簿外債務が存在しているのが実情です。

中小企業では、税法基準による会計処理(税務会計)を行っていれば実務的に問題ありません。
また、中小企業にはIFRSのような上場企業に適用される複雑な会計基準に精通している経理担当者がいないのが実情であり、またそのような会計処理ができたとしても税務の申告書が逆に複雑になってしまうため、実務的には税法基準による会計処理(税務会計)が行われています。
しかしながら、この税法基準による会計処理では簿外債務が生じてしまうことがあります。
また残念なことに故意に隠して簿外債務にしている場合もあります。

このようなことから、M&Aを実施するに当たり簿外債務の有無の見当がとても重要になります。

税法基準による会計処理(税務会計)とは

では、税法基準による会計処理とは、どのような会計処理なのでしょうか。

税法基準による会計処理は、債務改定主義にもとづく会計処理です。
債務確定主義とは、債務の確定したもののみ損金(必要経費)として計上するという考え方であり、税法における原則的な損金(必要経費)の計上基準のことです。
その事業年度(年)に支払った場合でも、債務の確定していないものはその事業年度(年)の損金(必要経費)になりませんし、逆に支払っていない場合でも、その事業年度(年)に債務が確定しているものはその事業年度(年)の損金(必要経費)になります。
法人税であれば法人税法22条、所得税であれば所得税法37条がその根拠条文とされています。
コラム「債務確定主義とは。法人税法と所得税法における要件。」

簿外債務(隠れ負債)の例

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具体的には、次のような勘定科目などに簿外債務が生じるおそれがあるため、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)において検討が必要です。

退職給付引当金

会計上は、退職給付債務は退職により見込まれる退職給付の総額のうち、期末までに発生していると認められる額を割り引いて計算することが求められます。
しかし税務上は、確定給付企業年金法に基づいて拠出した掛金についてのみ、法人においては損金の額に算入され、個人事業主においては必要経費に算入されます。
そのため、退職金規程がある場合には、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)において退職給付引当金を認識することになります。

また、退職金規程はないが従来から慣行として退職金を支給してる場合においても、退職給付引当金を認識するかどうかの検討が必要です。

役員退職慰労引当金

会計上は、役員退職慰労引当金は株主総会による承認決議を前提とするため株主総会の承認決議前の段階では法律上は債務ではないのですが、負債性引当金の性格を有するものとされています。
しかし税務上は、債務確定主義に基づき、役員退職慰労引当金を計上したとしても損金(必要経費)として認められません。
そのため、退職金退職慰労金規程がある会社をM&Aする場合には、役員退職慰労引当金を認識することになります。

賞与引当金

会計上は、賞与引当金は負債性引当金の性格を有するものとされています。
しかし税務上は、債務確定主義に基づき、賞与引当金を計上したとしても損金(必要経費)として認められません。

有給休暇引当金

国際会計基準(IFRS)では、累積型の有給休暇制度(当期の権利のすべてを行使しなかった場合に翌期以降行使できるもの)の場合は、翌期以降の有給休暇消化見積りに基づき有給休暇引当金を計上することが求められます。
しかし税務上は、債務確定主義に基づき、有給休暇引当金を計上したとしても損金(必要経費)として認められません。

貸倒引当金

会計上は、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて債権を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の三つに区分した上で貸倒見積高を算定し、貸倒引当金を計上することが求められています。
しかし税務上は、債務確定主義に基づき、貸倒引当金を計上したとしても大会社の場合は損金(必要経費)として認められません。
ほとんどの会社で何らかの金銭債権を有しているため、M&Aにおいて貸倒引当金の検討が必要になります。

未払費用

会計上、未払給与が計上されていないことがあります。
例えば、給与の締日が15日であった場合は16日~月末迄の給与を未払計上する必要があります。

また、潜在的な未払のサービス残業がある場合もあります。
期末月の未払社会保険料が計上されていないこともあります。
社会保険の加入が義務付けられているにも関わらず未加入である場合もあります。

さらには、従業員から未払のサービス残業代や未加入の社会保険について、潜在的に訴訟を起こされるリスクもあるのです。

買掛金の計上漏れ

期末月の買掛金の一部が計上されていないことがあります。
また、業績が悪く資金繰りが厳しい会社の場合、支払ができないため何か月も遅延しているどころか、買掛金がまったく計上されていないケースもあります。

デリバティブ(金融派生商品)

デリバティブとは、株式、債権、為替、金利などの原資産から派生した金融商品のことであり、金融派生商品とも呼ばれています。
具体的には、海外取引をおこなっている場合に為替リスクをヘッジする目的で、為替予約、通貨先物、通貨スワップ、通貨オプションなどを行うことがあり、それがデリバティブ取引に該当します。
会計上、デリバティブ取引により生じる正味の債権及び債務は時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は原則として当期の損益として処理することが求められています。
しかし、実際はこのデリバティブ取引により生じる正味の債務が時価評価されておらず、簿外債務(含み損)になってしまっている場合があります。

飛ばし

故意に負債を隠して簿外にしている場合もあります。
その典型例が「飛ばし」と呼ばれる手法です。
「飛ばし」とは、含み損を抱えている金融商品などの資産を会社外部の第三者企業に売却し、その損失を外部に飛ばす方法です。
会社が含み損を抱えている資産を保有し続けたままでは、評価損や減損損失を計上する必要があり、会社の財政状態や経営成績を悪化させます。
そのため、会社外部の第三者企業に対して、その損失を飛ばします。
ただし、その外部企業としても、含み損を抱えている金融商品などの資産をずっと保有し続けることはできないので、買戻し特約などが付いた売買になります。

この「飛ばし」の手法はバブル期の1990年頃までは、山一証券などの証券会社ではよく用いられていた方法だったようです。
1991年に証券取引法が改正されてからは事実上禁止された手法です。

最近では昔のような「飛ばし」は見られなくなりましたが、上場企業はストックホルダー(株主)からの業績向上や企業価値向上のプレッシャーがあるため粉飾決算の動機があることには変わりありません。
そのため、今でも「飛ばし」の手法は完全に無くなっているという事ではなく、M&Aにおいて気を付けなければなりません。

(2011年12月6日 日本経済新聞電子版より抜粋)
オリンパスの損失隠しの実態を調べていた第三者委員会(甲斐中辰夫委員長)は6日、調査報告書を発表した。
社長以下トップが主導し1999年3月期(98年度)から損失を簿外に移す「飛ばし」を実行、企業買収などを通じ総額1348億円を穴埋めした。

偶発債務

今までの例は、実際に存在する簿外債務ですが、M&Aのデューデリジェンスを行った時点において存在していなくても将来発生する可能性のある債務があります。
それが偶発債務と呼ばれるものです。

偶発債務とは、債務の発生する可能性が不確実な状況が決算日現在既に存在しており、将来事象が発生した場合に発生する債務のことです。

債務保証、保証予約、経営指導念書などがこの偶発債務に該当します。
経営指導念書とは、一般的に、子会社等が金融機関等から借入を行う際に、親会社等としての監督責任を認め、子会社等が経営指導などを行うことを約して金融機関等に差し入れる文書をいい、実務的には、経営指導念書、念書、覚書、レター・オブ・アウェアネス・キープウェル・レター等の標題により作成されています。
ただし、標題そのものが付されていないものもあるので、その存在の把握に注意が必要です。
その他、訴訟リスクや土壌汚染のリスクなどもこの偶発債務に該当します。

会計上は、偶発債務はその発生確率が高いものについては引当金を計上する必要があります。
発生確率が高くないものについてはその内容及び金額を注記することが求められています。
ただし、重要性の乏しいものについては注記を省略することができるとされています。

中小企業においては、上記のような会計処理が要求されていますが、実際的にはほとんどのケースで偶発債務は財務諸表に反映されていません。
また、上場企業であっても、偶発債務を財務諸表に反映するには様々な見積りが必要となるため、結果として十分に財務諸表に反映されていないことがあります。
このように、偶発債務が簿外債務(隠れ負債)となってしまっていることがあります。

M&Aのデューデリジェンスにおいて簿外債務(隠れ負債)が発見された場合

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今まで見てきたように、様々な勘定科目や契約書に簿外債務が隠れています。
M&Aで一番と言ってもよいほど怖いリスクは、この簿外債務や偶発債務です。
企業を買収した後で簿外債務が発見された場合、買主はその債務を支払う義務があるため大きな損害を被ることになります。
そのため、M&Aにおいて財務デューデリジェンス(財務DD)はとても重要な手続になります。
買手がこれらの財務リスクを承知の上でM&Aを行うとしても、そのリスクをしっかりと把握し、買収価格に織り込む必要があります。

簿外債務(隠れ負債)の発見方法

公認会計士が財務諸表監査を行う際には、このような簿外債務も見逃さないような手続を行うことが要求されています。
監査基準の中で、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)において簿外債務を発見するための方法として役立ちそうな基準の一部を抜粋して記載しました。

□財務報告プロセスの担当者に対して、仕訳入力及び修正のプロセスに関連する不適切な又は通例でない処理について質問すること。

□期末時点で行われた仕訳入力及び修正を抽出すること。

□過年度の財務諸表に反映された重要な会計上の見積りに関連する経営者の仮定及び判断に対して、遡及的に検討すること。

□企業の通常の取引過程から外れた重要な取引、又は企業及び企業環境に関する監査人の理解や監査中に入手した情報を考慮すると通例でないと判断されるその他の重要な取引について、取引の事業上の合理性(又はその欠如)が、不正な財務報告を行うため又は資産の流用を隠蔽するために行われた可能性を示唆するものであるかどうかを評価すること。

□監査人は、虚偽表示を識別した場合、当該虚偽表示が不正の兆候であるかどうかを評価しなければならない。
不正の兆候であると判断したときには、不正は単発的に発生する可能性は少ないことを認識し、他の監査の局面との関係、特に経営者の陳述の信頼性に留意して、当該虚偽表示が与える影響を評価しなければならない。

税理士法人MFMの財務・税務デューデリジェンス

財務デューデリジェンス(財務DD)は財務諸表監査の知識と経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼する方が安心です。
税務デューデリジェンス(税務DD)は税の専門家である税理士に依頼するのがよいでしょう。
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