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財務デューデリジェンス(財務DD)によるM&Aのリスクマネジメントが成功のポイント。
大阪・東京の税理士法人MFMグループ(四大監査法人出身の公認会計士在籍)

財務デューデリジェンスと財務諸表監査はどのくらい違うのか

財務デューデリジェンス(財務DD)と財務諸表監査は、いずれも主に会計専門家である公認会計士等が財務諸表をチェックするため、同じようなものであると思われている方も多いかもしれません。
一方で、財務デューデリジェンスと財務諸表監査は、「根本的に異なるもの」「全く異なるもの」であり、財務デューデリジェンスと財務諸表監査を混同している公認会計士に業務を依頼しない方がよいと主張している専門家もいます。
この主張はある意味では正しいのですが、両者には相違点もありますが共通点もあるため、誇張しすぎている部分もあるように思います。

財務デューデリジェンスは任意で行う手続であり、依頼者からの依頼内容や予算によって何をどこまで調査するかが違ってきます。
M&Aを初めて実施する会社から「M&Aに関する会計・税務についてよく分からないので、全般的にお任せします。」と依頼を受けた場合、会社情報の入手・検討、シナジー効果(相乗効果)の検討、M&A実施後の統合・スキームの検討、経営者への詳細な説明などの業務も必要となるため、両者は「根本的に異なるもの」「全く異なるもの」になるでしょう。
すでに数多くのM&Aを実施している会社から「当該案件について弊社で概ねの検討はしているのですが、万が一のために財務諸表のチェックのみお願いします。」との依頼を受けて実施する財務デューデリジェンスは、財務諸表監査に近いものになります。
M&Aで大きく成長してきた上場企業のような企業では、会社情報の入手・検討、シナジー効果の検討、M&A実施後の統合・スキームの検討などは社内で実施しています。
このような会社では、財務デューデリジェンスを実施する公認会計士に期待する役割は財務諸表監査に近い形のものとなり、M&A実施後に必要となる監査を見据えると、財務デューデリジェンスは監査法人に依頼する方がスムーズな場合も多いでしょう。
ただし大手監査法人は、人材が豊富で一定以上の品質管理ができているため安心して任せることができる反面、単価が高めで、また細かな手続の実施や上司のチェックの実施が社内で要求されるため長い作業時間が必要となり料金が高くなります。

コラム「デューデリジェンスとは。その費用の相場」

このコラムでは、財務諸表監査制度は法律により確立されている制度ですのでまずはそれを確認し、財務デューデリジェンスはその後で比較する形で違いを詳しく理解するという流れで記載しています。

財務諸表監査

財務諸表監査の目的と義務

財務諸表監査は、監査人が財務諸表を監査することにより社会的信頼性を付与し、投資家や債権者といった利害関係者が安心して取引を行うことをできるようにするための制度です。
監査基準第一(監査の目的)では、「財務諸表の監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明することにある。」とされています。

上場企業の有価証券報告書は、証券取引法により財務諸表監査を受ける義務があります(証券取引法193条の2)。
また、最終の事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上ある会社や、最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上ある会社(会社法2条6号)は、会社法においても財務諸表監査を受ける義務があるとされています(会社法328条)。

財務諸表監査の機能

財務諸表監査には、「保証機能」と「情報提供機能」の2つの機能があります。
保証機能とは、財務諸表の適正性に関する意見を監査報告書において表明することにより、 意思決定情報としての財務諸表の信頼性を保証するという機能です。
情報提供機能とは、企業の状況に関する利害関係者の判断に役立つ補足的な情報を提供するという機能です。
先ほどの監査の目的から見ると、財務諸表監査の本質的な機能は保証機能ということになります。

しかし、投資家や債権者といった利害関係者からは、より適切な意思決定を行うため、監査の過程において入手した有用な情報を提供して欲しいというニーズがあります。
ただし、財務諸表作成に関する責任は経営者にあり監査意見の表明に関する責任は監査人にあるという責任分担原則(二重責任の原則)があるため、監査人は情報提供機能を積極的に発揮することが困難になっています。
そのため現状では、監査報告書に追記情報を記載するという方法で一定の情報を提供することにより、情報提供機能を発揮しています。

監査基準八 追記情報
監査人は、次に掲げる強調すること又はその他説明することが適当と判断した事項は、監査報告書にそれらを区分した上で、情報として追記するものとする。
(1)正当な理由による会計方針の変更
(2)重要な偶発事象
(3)重要な後発事象
(4)監査した財務諸表を含む開示書類における当該財務諸表の表示とその他の記載内容との重要な相違

監査報告書の記載事項

財務諸表監査の結果については監査報告書に記載する必要があり、どのようなことについて記載する必要があるかは監査基準によって細かく定められています。
例えば、財務諸表に重要な虚偽の表示がなく無限定適正意見を表明する場合は、以下の事項を記載する必要があります。

報告基準 三 無限定適正意見の記載事項
監査人は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められると判断したときは、その旨の意見(この場合の意見を「無限定適正意見」という。)を表明しなければならない。この場合には、監査報告書に次の記載を行うものとする。
(1)監査人の意見
監査対象とした財務諸表の範囲、及び経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示していると認められること
(2)意見の根拠
一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を行ったこと、監査の結果として入手した監査証拠が意見表明の基礎を与える十分かつ適切なものであること
(3)経営者及び監査役等の責任
経営者には、財務諸表の作成責任があること、財務諸表に重要な虚偽の表示がないように内部統制を整備及び運用する責任があること、継続企業の前提に関する評価を行い必要な開示を行う責任があること
監査役等には、財務報告プロセスを監視する責任があること
(4)監査人の責任
監査人の責任は独立の立場から財務諸表に対する意見を表明することにあること
監査の基準は監査人に財務諸表に重要な虚偽の表示がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていること、監査は財務諸表項目に関する監査証拠を得るための手続を含むこと、監査は経営者が採用した会計方針及びその適用方法並びに経営者によって行われた見積りの評価も含め全体としての財務諸表の表示を検討していること、監査手続の選択及び適用は監査人の判断によること、財務諸表監査の目的は、内部統制の有効性について意見表明するためのものではないこと、継続企業の前提に関する経営者の評価を検討すること、監査役等と適切な連携を図ること、監査上の主要な検討事項を決定して監査報告書に記載すること

財務デューデリジェンス

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財務デューデリジェンスの目的と義務

財務デューデリジェンス(財務DD)を実施する最も重要な目的は、「M&Aに失敗しないため、そして成功させるため」です。
次に挙げる理由により財務デューデリジェンスを実施することがありますが、結局は「M&Aに失敗しないため、そして成功させるため」ということに集約されます。

経営者には善管注意義務という責任が課せられています。
善管注意義務とは、「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない」(会社法355条)という、経営者に課せられた責任です。
そしてその義務に違反してしまうと、「その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」(会社法423条)ことになってしまいます。
この経営者の善管注意義務を果たすため、財務デューデリジェンスや企業価値評価(バリュエーション)が実施されることがあります。

銀行などの金融機関からの資金調達に依拠してM&Aを実施する場合、金融機関が財務デューデリジェンスの実施を企業に要求することがあります。
万が一、質の悪い案件に手を出してしまい結果としてM&Aが失敗してしまった場合、貸付金が焦げ付いて回収が困難になってしまうため、金融機関がその実施を要求するのです。

M&Aを実施するにあたり財務デューデリジェンスを実施しなければならないと規定する法律はどこにもありません。

財務デューデリジェンスの機能

財務諸表監査には、「保証機能」と「情報提供機能」の2つの機能があり、本質的な機能は「保証機能」ということは先ほど述べました。
それでは、財務デューデリジェンスにはどのような機能が期待されているのでしょうか。

M&Aにおける投資意思決定のための最も重要な情報はやはり貸借対照表や損益計算書といった財務諸表です。
財務諸表に虚偽がありその虚偽の財政状態と経営成績の情報をもとに投資意思決定をしてしまうとM&Aは失敗してしまいます。
M&Aを失敗させないためには、 意思決定情報としての財務諸表の信頼性をしっかりと検証する必要があります。

それと同時に、M&Aを成功させるには、投資意思決定に有用な情報を財務面から提供することも大切です。
この有用な情報には、マイナスの情報のみならずプラスの情報も含まれますし、不確実な情報も含まれます。
財務デューデリジェンスの実施過程において入手された様々な情報を提供することは、経営者の投資意思決定に役立てることができるため、情報提供機能は積極的に発揮すべきものです。
財務デューデリジェンスと財務諸表監査とでは、この情報提供機能の部分が大きく違っています。

財務デューデリジェンス報告書の記載事項

財務デューデリジェンスは法律にもとづくものではなく任意で行う手続であり、依頼者からの依頼内容や予算によって何をどこまで調査するかが決まります。
そのため、記載事項が細かく定められている監査報告書とは違い、財務デューデリジェンス報告書には定型の様式はありません。

サービス案内「デューデリジェンス」

財務デューデリジェンスにおける情報提供機能の実務上の問題点

先ほども述べたように、財務デューデリジェンスにおいては専門家は積極的に情報提供機能を発揮すべきです。
ただし、現実的には情報提供機能を積極的に発揮するのは実務上は難しい場合があるのが実情です。
賛否両論あるかもしれませんが、ここではあえてその事について述べておこうと思います。

会社の予算と本質的な要求

M&Aのデューデリジェンスは、現地での資料のチェックとマネジメントインタビューだけ実施すればよいのではありません。
会社の理解や事業の理解といった基礎的な調査から始まり、事前に確認すべき文書もかなりの量になります。
また、現地ではよりリスクが高い事項を優先して検討する必要があり、現地調査の中でリスクが低く時間がかかりそうと判断した事項については事後的な作業に切り替えるため、デューデリジェンスは現地調査の後もまだ続くことになります。
財務諸表を中心とした資料の信頼性の検証だけでもかなりの時間を要するため、財務デューデリジェンス報酬もそれなりの金額になります。
もし情報提供機能を積極的に発揮するのであれば、もっと多くの時間を要してしまい、報酬もそれだけ高くなってしまいます。

デューデリジェンスは、買収対象企業を財務・法務・税務・人事労務・IT・ビジネス・不動産・環境・犯罪といった様々な側面から評価するため、M&Aにおける各分野の専門家が必要になります。
すべての分野の調査を専門家に依頼するとなると、莫大な費用が必要になります。
専門家に調査してもらわなければならない重要な部分はどこなのかを把握し、優先順位を付け、予算の範囲内で専門家にデューデリジェンスを依頼しています。
依頼会社としては財務デューデリジェンスにそれ程多くの費用をかけることができないのが実情でしょう。

財務デューデリジェンスを実施するにあたり、経営者からは情報提供機能の発揮も期待されますが、限られた予算の中においては本質的な要求は投資意思決定情報のために最も重要な情報である財務諸表の信頼性の検証です。
そのため、財務デューデリジェンスを実施する専門家にまず求められるのは、財務諸表の信頼性の検証です。
また、もし公認会計士が情報提供機能の発揮に重点を置き、財務諸表の信頼性の検証が疎かになってしまい、重要な虚偽の表示を見逃してしまうようなことになると、公認会計士の責任問題にも繋がります。

M&Aにおける会計専門家の役割

M&Aを実施しようと考えている会社の経営者は、M&Aに積極的な姿勢です。
仲介会社はM&Aが成立すれば大きな手数料が入ってくるので、プラスの情報を積極的にどんどん発信しM&Aを勧めてきます。
社内のM&A担当者も、自分の功績を作るため自分が持ってきた案件を強引に推し進めようするかもしれません。
このような状況で、財務デューデリジェンスを実施する会計専門家が、M&Aにプラスの情報ばかり提供したらどうなるでしょうか。
経営者、仲介会社、社内のM&A担当者、会計専門家の全員がM&Aに前のめりの姿勢になっていることになります。
M&Aは成立しますが、結果として失敗してしまうかもしれません。
成立と成功はイコールではありません。
「財務デューデリジェンスを実施する公認会計士は、一定のブレーキ役としての役割を担う。」ことは、経営者から明確ではないですが潜在的な要求としてあるのではないでしょうか。

世の中には怪しい会社やビジネス、不正・違法な行為により利益を得ている会社が結構多くあるものです。
M&Aを実施する際にデューデリジェンスを実施するかどうか悩まれている企業には、まずは犯罪デューデリジェンスを実施することをおすすめしています。
例えば200万円支払って財務DDと法務DDを実施し、そのデューデリジェンスの結果として代表取締役社長に過去に逮捕歴があったことが判明しM&Aを中止することとなった場合、その中止するという結論は出すために200万円のコストがかかってしまいます。
もし、社長が過去に逮捕されていたことが犯罪デューデリジェンスの実施によって判明した場合、おおよそ10分の1という料金で済みます。
犯罪デューデリジェンスは税理士法人MFMが独自に提供しているサービスであり、以下のようなリスクを探るためのデューデリジェンスです。
□会社の過去の行政処分の有無
□社長の過去の逮捕歴や前科の有無
□会社や社長が抱えている又は抱えていた訴訟の有無
□会社の所在地や役員の異常な異動の有無

サービス案内「犯罪デューデリジェンス」

税理士法人MFMグループは大阪、東京を拠点としていますが、関西(大阪府、京都府、兵庫県、滋賀県、奈良県、和歌山県)や関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県)のみならず、全国で調査を実施しています。

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M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門