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財務デューデリジェンス(財務DD)によるM&Aのリスクマネジメントが成功のポイント。
大阪・東京の税理士法人MFMグループ(四大監査法人出身の公認会計士在籍)

仲介会社から見た財務デューデリジェンス

M&Aの売手は、後継者が不在であったり事業の選択と集中を行うなどの理由により売却を考えています。
逆に買手は、規模の経済(スケールメリット)を享受するため、シナジー効果(相乗効果)を得るため、新事業に進出して多角化を図るため、などの理由によりM&Aの実施を検討しています。
売手と買手のニーズをうまくマッチングさせることができると、売手企業はさらなる成長軌道に乗ってくことができますし、買手企業もそれにより利益を得ることができます。
M&Aが成功すると、生産性の向上や雇用の創出などにより経済にプラスとなるため、M&Aの仲介会社は日本の成長を支える素晴らしい仕事をしており日本経済における大切な役割を担っています。
売手企業は取引先や従業員との関係がありM&Aを進めている事実を公表することができないことが多いため、関係者に分からないように動いてもらえるのも仲介会社の利用の大きなメリットの1つです。

デューデリジェンスは、英語では「Due Diligence」と書き、「当然の・正当な」という意味を持つ「Due」と、「努力・精励」という意味を持つ「Diligence」を組み合わせた言葉で、直訳すると「当然の努力」を意味します。
日本語に直訳しただけでは理解しにくいのですが、一般的には、企業買収(Mergers and Acquisitions)の前に行う買収対象企業の調査のことを意味します。
M&Aを実施する際には、買収対象企業を財務・法務・税務・人事労務・IT・ビジネス・不動産・環境といった様々な側面から調査する必要があり、財務デューデリジェンス(財務DD)は財務面から行う調査のことです。
この財務デューデリジェンスはM&Aにおいて最も一般的なデューデリジェンスであり、単にデューデリジェンスと呼ばれる場合は、この財務デューデリジェンスを意味していることが多くなっています。

この財務デューデリジェンスの実施により大きな問題の存在が発覚してしまうとM&Aが不成立になってしまい、仲介業者には大きな成功報酬が入って来なくなってしまいます。
手付金がなく成功報酬のみとしている仲介会社であれば、今までいろいろと動いてきた努力が完全に水の泡になってしまうことになります。
そのため、M&Aの仲介会社から見た財務デューデリジェンスは、M&Aを成立させるために無事に乗り越えて欲しい最大の難関といった位置付けになります。

M&Aの仲介会社は日本の成長を支える素晴らしい仕事をしており日本経済における大切な役割を担っているということを先ほど述べましたが、利益至上主義の仲介会社であれば高値でM&Aが成立して高い手数料が入ればよいと考えることになるでしょう。
仲介業者で働いている担当者レベルで見ると、M&Aが成立すれば手数料が入り、自分の評価が上がり、給料・賞与が上がるというインセンティブがあるため、案件を成立させることが第一目標という人も多いかもしれません。
高値で契約してもらうためには、M&Aのメリットをできるだけ見て欲しいと思うでしょうし、リスクはできるだけ見て欲しくないと思うでしょう。
そうなると財務デューデリジェンスは、できるだけ短く終わらせてできるだけ発見事項を少なくするべきものになるでしょう。
「売手への負担」などを理由に、現地の調査がタイトなスケジュールであったり、マネジメントインタビューが非常に短い時間に設定されていたりすることは実際にあることです。

コラム「デューデリジェンスとマネジメントインタビュー」

買手から見た財務デューデリジェンス

買手が財務デューデリジェンス(財務DD)を実施する最も重要な目的は、「M&Aに失敗しないため。そして成功させるため。」です。
隠れ債務が存在するリスクが高い、訴訟リスクが高い、税務リスクが高い、未払残業などの労働問題のリスクが高い、不正や違法行為をしているリスクが高い、などの状況であれば後々大きな負担となりM&Aが失敗するリスクが高まるため、M&Aは中止した方がよいという結論になるかもしれません。
買手がこれらのリスクを承知の上でM&Aを行うとしても、そのリスクをしっかりと把握し、買収価格に織り込む必要があります。
リスクが高い上に価格も高ければM&Aは失敗してしまいますし、リスクが低くても適正価格を超えていればM&Aは成功しません。
財務デューデリジェンスや企業価値評価(バリュエーション)を実施することより、リスクを適切に評価しリスクと買収価格とのバランスが取れているかを調査する必要があります。

仲介会社と買手の利害対立関係

大きな視点で見ると、M&Aが成功すると仲介会社も買手企業も利益を得ることができ日本経済にプラスになるため、Win-Winの関係にあります。
しかし、利益至上主義の仲介会社であればM&Aのリスクはでるだけ見て欲しくないと思いますし、買手企業はリスクをできるだけ見たいと思っています。
基本的には、仲介会社と買手企業は利害が対立する関係にあるのです。
そのため、「財務デューデリジェンスは仲介会社に依頼してはならない」というのが基本的な考え方になります。

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仲介会社に財務デューデリジェンスを依頼することの問題点

仲介会社に財務デューデリジェンス(財務DD)を依頼する最大の問題点は「第三者性がない」ということに尽きます。
残念ながらM&A市場においては、どれだけ有名な仲介会社からの紹介であっても質の悪い案件を掴まされてしまうおそれがあります。
利益至上主義の仲介会社であればM&Aのリスクはできるだけ見て欲しくないと思っています。
そのため仲介会社が実施する財務デューデリジェンスは、調査対象期間が短かくなっていたり、調査対象範囲が狭かったり、形式的で画一的な手続のみで深度ある手続を実施していないおそれがあります。
その結果、リスクが過小評価されてしまい、まったく買手のためになっていない財務デューデリジェンスとなることがあるのです。
財務デューデリジェンスの費用を負担するのはM&Aの買手ですし、M&Aのリスクのすべては買手が負担することになります。
この厳しいビジネスの世界において、他人におんぶに抱っこで簡単に利益を得ることなどできません。
そのような甘い考え方でM&Aをすれば間違いなく失敗して大きな火傷を負うことになってしまうでしょう。

仲介業者は財務デューデリジェンスを実施するのか

M&Aの仲介会社に財務デューデリジェンス(財務DD)を依頼すべきでないということはこれまで見てきましたが、実際に財務デューデリジェンスを実施する仲介会社はあるのでしょうか。
ホームページ等でどのような取り扱いをしているか記載している仲介会社がいくつかありましたので、抜粋したものを紹介していきます。

自ら実施する仲介会社

A仲介会社の記載

「多くのM&A仲介企業はこの料金の発生をデューデリジェンスの際の会計士、弁護士費用として発生させておりますが、弊社はすべて内製化していることから完全成功報酬としてサービスを提供しております。」

依頼があれば実施ないしフォローをする仲介会社

B仲介会社の記載

「M&Aに際して行われる財務デューディリジェンスや企業価値評価のご依頼もお受けしております。」

C仲介会社の記載

「M&Aの実施検討から企業価値評価、譲受企業とのマッチング、譲渡条件の調整、法務・税務・財務等のM&Aにおけるコア業務のフォローなど、M&A成約まで一貫してサポートします。」

D仲介会社の記載

「デューデリジェンスも弊社で行うことは可能ですが、弊社が仲介をしている案件については、成功報酬をいただく弊社がデューデリジェンスを行うことは利益相反の問題があるので、原則として買い手企業様の責任で行っていただいております。」

基本的には実施しない仲介会社

E仲介会社の記載

「デューディリジェンスを依頼する際には利害関係のない専門家に依頼することをお勧めさせて頂きます。」

このように、仲介会社によって財務デューデリジェンスの取扱いは様々です。
程度の違いはありますが、財務デューデリジェンスを実施している仲介会社の方が多い感じを受けます。
M&Aを仲介会社に依頼する場合、手付金や中間金といった料金体系も含めてどのような取り扱いになっているかの確認が必要になります。

仲介会社による財務デューデリジェンスが行われている理由

自社から直接依頼した第三者性のある専門家による財務デューデリジェンス(財務DD)を実施すべきということを分かっている買手も多いと思います。
しかし実際には、買手企業やM&Aの仲介会社の様々な事情により、仲介会社が財務デューデリジェンスを実施するケースがあります。

買手の事情

誰に頼めばよいか分からない

上場企業などの大きな会社は別にして、M&Aが年々増加しているとはいっても中小企業にとってはまだまだM&Aは遠い存在でしょう。
何十年と社歴があり事業を堅実に大きくしてきた中堅企業であっても、まだM&Aは実施したことがない会社も多くあります。
よい意味で保守的な社風があり、バブル期から現在に至るまでよく分からない投資には手を出してこなかったからこそ堅実に成長して中堅企業になっているのです。

M&Aを初めて実施する会社は、財務デューデリジェンスがどのようなものであるかや、どれほど必要なのかということを知りません。
財務デューデリジェンスを顧問税理士以外の専門家に依頼したいと思っても、M&Aや会計に詳しい専門家が知らなければ信頼できる専門家を探すのに一苦労です。
また、なんとか財務デューデリジェンスを実施する専門家を見つけることができたとしても、M&Aはスケジュールがタイトであることが多いため急に依頼しても予定を間に合わせることができないこともあるでしょう。
そのため、初めてM&Aを実施する中小企業は仲介会社に対し、「財務デューデリジェンスを実施してもらえるなら実施して欲しい。」「財務デューデリジェンスを実施してくれる専門家を紹介して欲しい。」といった一定のニーズがあります。
本来は自社のリスク管理は自社でコントロールしなければならないのですが、仲介会社に頼ってしまわざるを得ないのです。

コストの問題

一般的には、M&Aの財務デューデリジェンスの費用の相場は1時間当たり2〜5万円となっていることが多いようです。
財務デューデリジェンスの報酬料金を公表している公認会計士(監査法人)はほとんどありませんが、「公認会計士 時間単価」「公認会計士 タイムチャージ」などで検索すると公認会計士の概ねの報酬料金の相場が分かると思います。
ただし、財務デューデリジェンスは専門性が高い分野であるため、一般的にはその料金より少し高くなります。
財務デューデリジェンスの費用の相場が高いと思われる方も多いと思いますが、それだけリスクの高い買い物をしているということの裏返しでもあります。

弊社に問い合わせを頂き財務デューデリジェンスを実施したある案件では、最初に問い合わせた専門家からの見積額が2,000万円だったという話しを聞いたことがあります。
そんな多額の費用はかけれないということで問い合わせを頂き、弊社で財務デューデリジェンスを実施したところ10分の1以下の価格になりました。
自社で専門家を探す場合、最初に聞く相手を間違えるととんでもなく高い見積りが出てくることがあります。
その見積額を聞いた時点で自社で専門家を探すことを諦めてしまい、仲介会社に財務デューデリジェンスを依頼するということもあるでしょう。

コラム「デューデリジェンスとは。その費用の相場」

実施しないよりまし

財務デューデリジェンスを実施せずにM&Aを実施するという会社も中にはあるようです。
仲介会社に財務デューデリジェンスを依頼すると第三者性はありませんが、実施しないよりはまだましでしょう。

仲介会社の事情

早く安く実施できる

どのような商品を販売する際にも言えることですが、商品のカタログが必要になります。
M&Aにおける商品のカタログは、ピッチブック(Pitch book)、ティーザー(Teaser)、ノンネームシート(Non-name Sheet)などややこしい横文字で呼ばれています。
これらのカタログを作成するためには、貸借対照表や損益計算書といった財務諸表が必要ですし、様々な会社情報も入手する必要があります。
案件を提案する段階で、すでに過去何期分かの財務諸表を入手しており、ある程度の会社の理解も進んでいます。
そのため、M&Aの仲介会社は財務デューデリジェンス(財務DD)を比較的早くそして安く実施できるのです。

他社より早く契約を早く成立させたい

買手企業が専門家を探すだけで時間がかかっているようでは財務デューデリジェンスの実施にはもっと時間がかかってしまい、仲介会社としてはM&Aの取引がスムーズにいきません。
もし取引が遅くなってしまうと、売手企業が他の仲介業者と契約してしまいビジネスチャンスを逃してしまうおそれもあります。
自社で迅速に財務デューデリジェンスを実施できるのであれば自社で実施し、他社に取られる前に契約を成立させたいと思う事でしょう。

売手の業績が悪くなる前に契約を成立させたい

売手企業の前期の業績が良く今期の業績が悪くなる見込みである場合、今期中にM&Aが成立すれば高値での契約が期待できますが、来期にずれこんでしまうと安値でしか売れなくなるおそれがあります。
M&Aの世界においても商品には「旬」があります。
仲介会社が自社で迅速に財務デューデリジェンスを実施することができると、「旬」の内に高値で売却することができるのです。

心変わりする前に契約を成立させたい

M&A取引がスムーズに進まないと人間のことなので心変わりがあり、「やっぱり売るのをやめた」や「やっぱり買うのをやめた」ということもあります。
経済情勢が変わり業績が良くなった場合、「売るのがもったいなくなる」という心変わりもあります。
気分や経済情勢が変わらない内にできるだけ早く契約を成立させたいと思うことも、仲介会社が自社で財務デューデリジェンスを実施したいと思う誘因の1つです。

売手への負担を考慮

例えば、売手企業の過去のM&Aが連続して不成立に終わり、今回が3回目のチャレンジとなった場合、同じような財務デューデリジェンスを受けるのが今回で3回目ということになります。
財務デューデリジェンスに対応するには、様々な資料の提供が必要となり、また様々な質問に対する回答をしなければならないため、それが3回目ともなれば売手企業にとっては大きな負担となっているでしょう。
もし売手がそのことを負担に感じており、財務デューデリジェンスの対応に消極的な姿勢になってしまうとM&Aが成立せず、仲介会社に成功報酬が入ってこなくなってしまいます。
もしこのような場合に、仲介会社が財務デューデリジェンスを実施していれば、売手企業の負担を軽減させることができM&Aが成立する確率も上がることでしょう。

仲介会社の担当者に紹介してもらった公認会計士に依頼することの可否

買手企業が財務デューデリジェンス(財務DD)を実施する専門家を知らない場合、M&Aの仲介会社に知り合いの公認会計士を紹介してもらい、業務を依頼するということもあります。
実際的には、信頼して財務デューデリジェンスを依頼できる公認会計士はそれ程多くないため、仲介会社から紹介されることがあります。
買手からすると公認会計士に直接仕事を依頼し報酬を払うことになるため、第三者性があるように見えますが、これにも問題がまったく無いことはありません。

紹介を受けた公認会計士からすれば、確かに仕事の依頼を受けて報酬を受け取るのは買手企業からですが、仕事の紹介をしてくれたのは仲介会社の担当者です。
もし財務デューデリジェンスの中で大きな問題が見つかり買手企業に「絶対に止めた方がいいですよ」というと、M&Aは中止になってしまいます。
そうすると、仕事を紹介してくれた仲介業者の担当者に対して悪い事をしてしまった気になってしまいます。
今回の仕事を紹介してくれたことに義理を感じていたり今後のビジネス関係の事も考えると、仲介会社の担当者の意に反することはしにくくなり、いわるゆる「忖度」がなされるおそれがあります。
専門家は財務デューデリジェンスの中で見つかった問題点を報告しないということはないでしょうが、報告のニュアンスが変わってくることが考えられます。
そのため、財務デューデリジェンスを実施する公認会計士は、買手企業が自社で探されることをおすすめしています。

サービス案内「財務デューデリジェンス」

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M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門