税理士法人MFM(公認会計士在籍)
DIC株式会社「ドイツ BASF 社の顔料事業に関する株式及び資産の取得(子会社化)に関するお知らせ」
当社は、欧州化学メーカー最大手のドイツBASF社が保有する顔料事業であるBASF Colors & Effects(以下、「対象事業」)に関する株式及び資産の取得(以下、「本買収」)を決定しましたので、以下のとおりお知らせします。
なお、本取引は米国及び欧州委員会をはじめとする各国規制当局の承認を必要としています。
1. 株式及び資産取得の理由
(1)背景
当社は、印刷インキの製造販売で創業し、その基礎素材である有機顔料と合成樹脂をベースとして事業範囲を拡大、現在では印刷のみならず自動車、エレクトロニクス、ヘルスケアなど、多様な市場に社会とお客様のニーズに対応した製品を提供しています。
2019 年度から始動した中期経営計画「DIC111」では、「安全・安心」、「彩り」、「快適」の価値提供を通じて、“ユニークで社会から信頼されるグローバル企業”を目指し、「質的転換」による事業体質の強化=「Value Transformation」と、社会課題や社会変化に対応した新事業の創出=「New Pillar Creation」の2つを基本戦略として推進しています。基本戦略の実現に向け、戦略的投資枠を設定し、M&A などによる非連続的成長を加速していくことに取り組んでいます。
(2)目的
当社は、カラー&ディスプレイ事業部門における質的転換を加速させるため、高成長で高付加価値なスペシャリティ領域(ディスプレイ・化粧品・自動車など)における顔料業界のリーディングカンパニーを目指し、機能性顔料の拡大を進めてきました。グローバル顔料市場は約 2.3 兆円の規模があり、当社はそのうち有機顔料とエフェクト顔料(アルミ顔料)で世界有数の会社です。
一方、対象事業は、欧州を中心にグローバルに拠点を有し、高級顔料、エフェクト顔料(化粧品向け)及び特殊無機顔料において世界有数の会社です。対象事業が保有する製品ポートフォリオは、当社と重複が少なく製品補完性が極めて高い状況にあります。
本買収により、当社は市場での評価が高い高機能製品をポートフォリオに取り込み、機能性顔料事
業を拡大することでカラービジネスの持続的成長にコミットし、企業価値の向上に繋げていきます。
2. 対象事業の概要
本買収では顔料事業に関する技術、特許などの知的財産及び株式買収に含まれない営業権などの資産及び当該事業を構成する 18 社の株式を取得します。対象事業のうち、主要な2社の概要は以下のとおりです。(以下、1ユーロ=118 円、1米ドル=105 円で換算し、小数点以下は四捨五入)
① BASF Colors & Effects GmbH
(1)名称 | BASF Colors & Effects GmbH | |
(2)所在地 | Ludwigshafen am Rhein, Germany | |
(3)代表者の役職・氏名 | Alexander Haunschild | |
(4)事業内容 | 顔料及び関連製品の製造販売 | |
(5)資本金 | 25,000 ユーロ(3 百万円) | |
(6)設立年月日 | 2016 年 4 月 1 日 | |
(7)大株主及び持株比率 | BASF Handels- und Export GmbH 100% | |
(8)上場会社と当該会社との間の関係 | 資本関係 | 記載すべき関係はありません。 |
人的関係 | 記載すべき関係はありません。 | |
取引関係 | 当社グループと当該会社グループ間で顔料の売買関係があります。 |
② BASF Colors & Effects USA LLC
(1)名称 | BASF Colors & Effects USA LLC | |
(2)所在地 | Delaware, U.S.A. | |
(3)代表者の役職・氏名 | Brian Marsicano, Coleen A. Berardelli | |
(4)事業内容 | 顔料及び関連製品の製造販売 | |
(5)資本金 | 252,939 米ドル(27 百万円) | |
(6)設立年月日 | 2016 年 4 月 1 日 | |
(7)大株主及び持株比率 | BASF Corporation USA 100% | |
(8)上場会社と当該会社との間の関係 | 資本関係 | 記載すべき関係はありません。 |
人的関係 | 記載すべき関係はありません。 | |
取引関係 | 当社グループと当該会社グループ間で顔料の売買関係があります。 |
3.取得対象事業の最近3年間の連結経営成績及び連結財政状態(注1)
決算期 | 2016年12月期 | 2017年12月期 | 2018年12月期 |
連結純資産 | - | 844百万ユーロ (99,592百万円) | 884百万ユーロ (104,312百万円) |
連結総資産 | - | 1,365百万ユーロ (161,070百万円) | 1,424百万ユーロ (168,032百万円) |
連結売上高 | - | 1,014百万ユーロ (119,652百万円) | 992百万ユーロ (117,056百万円) |
EBIT before special items(注2) | - | 73百万ユーロ (8,614百万円) | 71百万ユーロ (8,378百万円) |
EBITDA before special items(注2) | - | 126百万ユーロ (14,868百万円) | 120百万ユーロ (14,160百万円) |
(注)1 取得対象事業に関連する全会社の連結経営成績及び連結財政状態です。BASF社は対象事業を2016年にカーブアウトしました。営業利益、経常利益、純利益及び2016年12月期の連結経営成績及び連結財政状態については、BASF社より開示を受けていないため記載していません。
2 BASF社が用いる経営成績指標です。
4.株式及び資産取得の相手先の概要(2018 年 12 月 31 日現在)
(1)名称 | BASF SE | |
(2)所在地 | Ludwigshafen am Rhein, Germany | |
(3)代表者の役職・氏名 | Chairman of the Board, Dr. Martin Brudermüller | |
(4)事業内容 | 化学製品の製造販売 | |
(5)資本金 | 1,176 百万ユーロ(138,768 百万円) | |
(6)設立 | 1865 年 | |
(7)純資産(連結) | 36,109 百万ユーロ(4,260,862 百万円) | |
(8)総資産(連結) | 86,556 百万ユーロ(10,213,608 百万円) | |
(9)大株主及び持株比率 | (注)参照 | |
(10)上場会社と当該会社の関係 | 資本関係 | 記載すべき事項はありません。 |
人的関係 | 記載すべき事項はありません。 | |
取引関係 | 当社グループと当該会社グループ間で顔料の売買関係があります。 | |
関連当事者への該当状況 | 記載すべき事項はありません。 |
(注) ドイツ証券取引法(Wertpapierhandelsgesetz, WpHG)に基づき、議決権にアクセスする株主及び個人は、株式又は他の金融商品の取得、処分、あるいは他の手段(§§33、38 及び 39、旧§§21、25 及び25a WpHG)のいずれかによって、上場会社の議決権の 3%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、50%又は 75%の基準値に達したか、それを超えたか、又はそれを下回った場合、直ちに発行者及び連邦金融監督当局(Bundesanstalt fur Finanzdienstlengsaungsaufsicht, BaFin)に通知する義務があります。発行者は、遅滞なく議決権を通知する義務を負います。
主要株主の概況
・§33, 34 WpHG (3%超)に基づき株式に付与された議決権:
BlackRock Inc.(6.61%、2018 年 3 月 22 日)
・§38 WpHG (5%超):
該当なし
5.取得価額(参考値)
985 百万ユーロ(1,162 億円)
(注)1 上記取得価額は、対象事業の企業価値(1,150 百万ユーロ)から 2018 年末時点の現預金・借入金等の残高を調整した金額(参考値)です。実際の取得価額は、クロージング時点での現預金・借入金等の残高や運転資金の増減などにより変動します。
2 アドバイザリー費用などの手数料は、米国及び欧州委員会をはじめとする必要各国の競争法手続きに係る費用などが未確定のため記載していません。
6.日 程
(1)契約締結日 | 2019 年 8 月 29 日 |
(2)本買収実行日 | 2020 年末まで |
(注)1 米国及び欧州委員会をはじめとする必要各国の競争法当局からの承認を前提としています。
2 規制当局手続きやクロージング条件により、本買収実行日が変更する可能性があります。
7.資金調達方法について
株式希薄化による資本効率性低下の回避と健全な財務体質の維持を考慮した資金調達を行う方針です。具体的には、当社が保有する手元資金及び新規のブリッジローンにより充当し、その後、最適な財務構成実現に向けた資金調達を検討予定です。新株発行を伴う資金調達(エクイティファイナンス)は予定していません。
当社は、中期経営計画「DIC111」で財務体質の指標としている D/C レシオ※を 50%程度にコントロールするという計画を公表していますが、本買収実行後の D/C レシオは、計画の範囲内に収まる見通しです。
※D/C レシオ : 有利子負債/(有利子負債+純資産)
8.今後の見通し
本件に伴う 2019 年 12 月期の当社連結業績に与える影響は軽微です。今後、開示すべき事項が発生した場合には、判明次第速やかにお知らせします。
以 上
コラム「経理担当者が知っておくべきデューデリジェンスの流れと注意点」
税理士法人MFM
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門