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秘密保持契約書とは

秘密保持契約書とは、外部者と取引を行う際に、その業務上知り得た秘密情報(機密情報)や個人情報などの情報を第三者に開示してはならないとする契約書のことです。
機密保持契約書や守秘義務契約書とも言われます。

英語では、NDA(Non disclosure agreement)と言います。
CA(Confidentiality Agreement)とも言われますが、NDAと言われることが最も多いと思います。

M&Aのデューデリジェンスで秘密保持契約書は必要なのか

事業者の「営業秘密」を保護し、事業者間の公正な競争を確保するため、不正競争防止法という法律が存在します。
そのため、M&Aのデューデリジェンスにおいても不正競争防止法が適用され、秘密保持契約書の締結の有無に関わらず、その「営業秘密」を不正に使用・開示してはいけません。
不正競争防止法に違反すると、刑事上・民事上の事件へと発展します。
現実的にも、ジャスダック上場のOA機器販売会社が、M&Aの際に、売手企業にコピーしない約束で提出させたを紙の顧客リストをデータ化していたとして家宅捜索が行われ、2019年に不正競争防止法違反で書類送検された事例があります。
民事訴訟(損害賠償請求)も検討されているようです。

このように「営業秘密」が法律で保護されているのであれば、そもそも秘密保持契約書を締結する必要はないのでは?という疑問が浮かびます。
この点、M&Aのデューデリジェンスの実務においては、秘密保持契約書を締結するのが一般的になっています。
これは、不正競争防止法で保護される「営業秘密」には当たらないとしても、第三者に知られては不都合な情報である「秘密情報(機密情報)」を保護するために有効なのが秘密保持契約書だからです。
「営業秘密」と「秘密情報(機密情報)」を混同してはいけません。

あくまで法律で保護される「営業秘密」は、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの(不正競争防止法2条)に限られます。
ややこしい法律の話しになりますが、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」の3要件を満たしてはじめて不正競争防止法上の保護の対象となる「営業秘密」になります。
そのため、外部に出したくない情報の範囲を広めて「秘密情報(機密情報)」を保護するためには、秘密保持契約書を締結する必要があります。

デューデリジェンスでは、売主側は、非常に重要な情報を(重要な情報であればあるだけ)開示を要求されます。
また、財務上・税務上・法務上関係するすべての情報についても開示を要求されることになります。
もしこのような情報が外部に漏れてしまうと取り返しがつかない大変なことになってしまいます。
□ 従業員がM&Aを知って精神的に動揺し退職してしまうおそれがある
□ 顧客などの取引先が「業績が悪いのでは」と不安を感じて今後の取引に悪影響が出る
□ 金融機関との関係が悪化するおそれがある(逆に歓迎されることもあります)

財務デューデリジェンス(財務DD)の現場を見ている中で、M&Aの売手の経営者が最も気にする点はやはり従業員に情報が漏れてしまうことです。
情報漏えいによって事業に重要なキーパーソンが退職してしまうようなことになると、企業価値も下がってしまいます。
M&Aの契約に影響するどころか、最悪、会社の事業の存続まで危うくなってしまいます。
情報漏えいは絶対にあってはならず、そのためにもM&Aにおいて秘密保持契約書をしっかりと締結することが重要です。

M&Aにおいては、一般的にはノンネームシートと呼ばれる、会社が特定されるような具体的な情報が記載されていない資料であり、業種、事業内容、売上規模等の財務内容、地域、譲渡理由等の概要を匿名でまとめた簡易な資料を、買手の候補者に最初に渡します。
そして、買手がこの案件に興味を持ち、より詳細な情報を知りたいとなったときに秘密保持契約書を締結し、詳細な情報を開示するという流れになります。
コラム「M&Aにおいてデューデリジェンスは必要なのか」
コラム「経理担当者から見たM&Aのデューデリジェンスの流れと注意点」

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秘密保持契約書の対象者

M&Aのデューデリジェンスは、買収対象企業を財務・法務・税務・人事労務・IT・ビジネス・不動産・環境といった様々な側面から評価する必要があるため、各分野の専門家の知識・経験が必要になります。
もし、秘密保持契約書によって買手企業のごく少数の担当者しか当該秘密を知り得ないとしたのであれば、十分なデューデリジェンスができずM&Aは前に進みません。
そのため、一般的には、デューデリジェンスに関連する公認会計士、弁護士などの専門家はその対象から除外されています。
コラム「デューデリジェンスの種類と必要な資格」

秘密保持契約書の範囲

では、秘密保持契約書を交わした場合、売手企業から提供を受けたすべての情報について第三者に開示してはならないのでしょうか?

いくら契約書でそのようになっていたとしても、実際はすべての情報が対象になる訳ではありません。
秘密保持の対象を過度に広くし過ぎる契約書は、必要性や合理性の観点から公序良俗違反となり、無効とされる可能性があります。
そのため、秘密保持契約書では、秘密保持の対象とすべき情報を特定することが必要になります。
例えば、次のような情報はその対象から除かれることが多くなっています。
□ 開示を受けたときに既に保有していた情報
□ 開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報
□ 開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報
□ 開示を受けたときに既に公知であった情報
□ 開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報
□ 秘密情報から除外することとした情報

秘密保持契約書の雛形

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秘密保持契約書の雛形は、インターネットを検索すると様々なものを見つけることができます。
弁護士法人(弁護士事務所)、M&Aの仲介会社、ビジネス情報サイト、弁理士会、経済産業省・・・など様々な関係者がホームページ上でそのサンプルを無料で公表しています。
反社会勢力や知的財産などについて記載した条文・条項のあるものや、三者間契約となっている工夫を凝らしたオリジナルのテンプレートまで無料で公表されています。

上場企業などであればしっかりとした弁護士に作成してもらった自社に合致する秘密保持契約書の雛形があるかと思いますが、中小企業でばそういう訳にもいきません。
ただし、仲介会社を通してM&Aを行うのであれば、通常はM&A仲介会社が雛形を持っているので、一般的にはそれを使うことになります。

中小企業が社内で秘密保持契約書を作成することを検討するのであれば、経済産業省が公表している「秘密情報の保護ハンドブック」が最も参考になると思います。
このハンドブックは200ページ以上にもわたる分厚いものですが、その中に参考例が入っています。
具体的には、「参考資料2 各種契約書等の参考例」の「第4 業務提携の検討における秘密保持契約書の例」にその参考例があります。
全7条のとてもシンプルな参考例ですが、基本的な部分はしっかりすべて網羅されています。

秘密保持契約書には、「契約書方式」と「差入方式」の2種類が存在します。
「契約書方式」とは、当事者の双方が、契約書の内容に合意し記名、捺印を行う方式です。一般的には、双方が秘密保持義務を負うときにこの方式が利用されます。
「差入方式」とは、当事者の一方のみが、契約書の内容に合意し記名、捺印を行い、それをもう一方に差し入れる方式です。誓約書のようなものになっています。一般的には、当事者の一方だけが秘密保持義務を負うときにこの方式が利用されます。
ちなみに、経済産業省の参考例は「契約書方式」になっています。

秘密保持契約書の有効期間

秘密保持契約書には、有効期間に関する条文が記載されています。
例えば、先ほども見た経済産業省の参考例はこのようになっています。
「本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする」

このように、有効期限は〇年間と定められていますが、自動更新の条項が入っており、書面の通知がなければ永久的に続く形式になっています。
M&Aの売手企業としては、秘密情報はできるだけ長期間にわたって第三者に開示して欲しくないと考えるため、長期間に設定したり、自動更新の条項を入れた方が有利です。
逆に買手企業としては、長期間にわたって損害賠償請求の対象となる情報を管理するのはコストもかかる上にリスクを抱え続けることになるため、できるだけ短期間に設定する方が有利です。
そのため、この有効期間については、M&Aの売手と買手の交渉の対象となる部分です。

秘密保持契約書に印紙は必要なのか

一般的には、印紙を貼付する必要はありません。

国税庁の資料で秘密保持契約書に印紙が必要かどうかについて明確に記載されているものはないようです。
印紙税は、印紙税法の「別表第一 課税物件表」の第1号~20号に分類されている50種類以上の文章のみを課税対象としおり、これらの文書に該当しなければ印紙税は課税されません。
そのため、印紙税が課税されるかどうかを判断するには、これらの文書に該当するかどうか1つずつ検討していくことになります。
一般的な秘密保持契約書は、これらの文書には該当せず印紙税は必要ありません。

しかしながら、印紙税というのは、1つ文言が異っていたり営業担当者の認印があるだけで、非課税文書から課税文書になってしまうことがある非常にやっかいな税金です。
そのため、M&Aにあたり自社でオリジナルの契約書を作成した場合には、印紙税の要否を慎重に検討する必要があります。

税理士法人MFMの財務・税務デューデリジェンス

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