不動産登記簿謄本は情報の宝庫
不動産の売買や不動産のM&A(Mergers and Acquisitions)のデューデリジェンスなどを行うため、登記簿謄本を取ることがあります。
登記簿謄本の取得・検討は物件調査の入口ですが、実は情報の宝庫なのです。
さっと流し読みしてしまったがために地面師などのあやしい人と取引をしてしまい詐欺の被害に遭ってしまうこともあります。
単に不動産の登記簿謄本といっても、土地、建物(区分建物でないもの)、建物(区分建物)では記載内容がことなるため、このコラムでは土地の登記簿謄本の基本的な見方を説明していきます。
なお、登記簿謄本の読み方は「とうきぼとうほん」です。
不動産登記簿謄本の部と区
不動産の登記簿謄本は、「表題部」と「権利部」の2つの部に大きく分かれています。
また、「権利部」については、「甲区(所有権に関する事項)」と「乙区(所有権以外の権利に関する事項)」に分かれています。
そして、複数の不動産に関する権利を目的とする担保権の保存又は設定の登記の申請があった場合、末尾に「共同担保目録」が記載されます。
そのようなことから、一般的には不動産の登記簿謄本は3つに分かれていると言われていますが、2部(表題部、権利部)+2区(甲区、乙区)+1目録(共同担保目録)の構成になっています。
出展:登記情報サービス
表題部(土地の表示)
土地の登記簿謄本に記録される項目は以下のようになっています(不動産登記規則第4条第1項・別表1)。
調製
『令和〇年〇月〇日』
『余白』
コンピュータ化以前からある登記簿については、当該コンピュータ化された登記簿へ移記した年月日が記載されます。
最初からコンピュータ様式で登記されている場合は上の例のように「余白」と記載されています。
調製の年月日が記載されており、当該日付より古い詳細な記録が知りたいときは、閉鎖登記簿(閉鎖謄本)を取得する必要があります。
不動産番号
『〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇』
土地 であれば1筆ごとに建物であれば1棟ごと(区分建物の場合は各専用部分ごとに)に、13桁の固有の不動産番号が付けられており重複する番号はありません。
地図番号
『余白』
当該土地について14条地図が整備されている場合、その地図番号が記載されます。
ただし、地図の備付けが完了していない地域が多くあり、多くの場合で「余白」となっています。
筆界特定
『令和〇年〇月〇日筆界特定(手続番号〇〇)』
『余白』
「筆界特定」の読み方は「ひっかいとくてい」です。
筆界特定とは、土地の境界を明確にするため、土地の所有権者等の申請により境界の位置を特定する不動産登記法上の手続であり、平成18年に新設された制度です。
筆界特定が行われた場合、実施された年月日と手続番号が記載されます。
まだの場合は「余白」と書かれています。
所在
『〇市〇区〇丁目』
地番
『〇番〇』
地目
『宅地』etc
『田』『畑』『宅地』『学校用地』『鉄道用地』『塩田』『鉱泉地』『池沼』『山林』『牧場』『原野』『墓地』『境内地』『運河用地』『水道用地』『用悪水路』『ため池』『堤』『井溝』『保安林』『公衆用道路』『公園』『雑種地』のいずれかの地目が記載されています。
この地目は不動産登記事務取扱手続準則68条によって23種定められています。
土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的にわずかな差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して定めるものとされています。
地積
『〇〇:〇〇』
地積は、1㎡の100分の1未満の端数は切り捨てられて記載されます(不動産登記規則100条)
原因及びその日付[登記の日付]
『〇番より文筆
令和〇年〇月〇日』etc
原因及びその日付欄には、「登記原因及びその日付」や「河川区域内又は高規格堤防特別区域内、樹林帯区域内、特定樹林帯区域内若しくは河川立体区域内の土地である旨」や「閉鎖の事由」が記載されます。
登記の日付欄には、「登記の年月日」や「閉鎖の年月日」が記載されます。
所有者
『〇〇〇〇』
所有者及びその持分が記載されます。
権利部-甲区(所有権に関する事項)
順位番号
『1』
『2』etc
権利部に関する登記がなされた場合、順序を示す番号が記載されます(不動産登記規則第147条)。
登記がなされた時間的な順番で順位番号が記載され、早い順位番号であるほど優先的な権利があり、遅い順位番号であるほど劣後します(不動産登記法第4条、不動産登記規則第2条)。
なお、権利の登記の抹消をするときは抹消の登記をするとともに抹消すべき登記を抹消する記号を記録しなければならない(不動産登記規則第152条)とされており、抹消事項には下線が引かれるとともに登記簿謄本の末尾に「* 下線のあるものは抹消事項であることを示す。」という注意書きが書かれています。
登記の目的
『所有権移転』
『登記名義人住所変更』
『差押』
『破産』etc
不動産の権利に関する登記は様々な要因により行われることから、登記の目的が記載されます(不動産登記法第59条第1号)。
受付年月日・受付番号
『令和〇年〇月〇日
第〇〇号』etc
申請の受付の年月日及び受付番号が記載されます(不動産登記法第59条第2号)。
権利者その他の事項
『原因 令和〇年〇月〇日売買
所有者 〇〇〇〇』etc
登記原因及びその日付、権利者の氏名又は名称及び住所などが記載されます(不動産登記法第59条第3号以下)。
不動産の売買や不動産のM&Aのデューデリジェンスなどを行う際には、まずは売手が真実の所有権であるかどうかを確かめる必要があるため、ここの部分を確認することになります。
コラム「デューデリジェンスとは」
権利部-乙区(所有権以外の権利に関する事項)
順位番号
『1』
『2』etc
甲区と同様、順序を示す番号が記載されます。
登記の目的
『抵当権設定』
『〇番抵当権変更』
『〇番抵当権抹消』etc
甲区と同様、登記の目的が記載されます(不動産登記法第59条第1号)。
受付年月日・受付番号
『令和〇年〇月〇日
第〇〇号』etc
甲区と同様、申請の受付の年月日及び受付番号が記載されます(不動産登記法第59条第2号)。
権利者その他の事項
『原因 令和〇年〇月〇日設定
債権額 金〇〇万円
利息 年〇%
損害金 年〇%
債務者 〇市○区○町〇番
〇〇〇〇
抵当権者 〇市○区○町〇番
〇〇〇〇』etc
甲区と同様、登記原因及びその日付、権利者の氏名又は名称及び住所などが記載されます(不動産登記法第59条第3号以下)。
不動産の売買や不動産のM&Aのデューデリジェンスなどを行う際には、抵当権の有無等を確かめる必要があるため、ここの部分を確認することになります。
コラム「財務デューデリジェンスと事前依頼資料」
事故物件調査
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税理士法人MFM
M&A財務デューデリジェンス(財務DD)部門