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賞与引当金とは何か

賞与引当金(しょうよひきあてきん)とは、将来における賞与の支払に備えて、当期の負担に属する金額を当期の費用又として繰入れるとともに、貸借対照表の負債の部に計上するものです。
英語では、「Provision for bonuses」といいます。

例えば3月決算の会社で7月に支給される夏の賞与の査定期間が12月~5月の場合、この夏に支給される賞与の内の4ヶ月分(12月~3月)は3月までに発生したものです。
そこで、当期末においてその金額を見積もり、その見積額を当期の費用として計上することになります。
「賞与引当金繰入額」という勘定科目を用いて損益計算書に計上します。
複式簿記は相手となる勘定科目が必要となるため、「賞与引当金」という相手勘定で処理します。
そして貸借対照表においては、賞与引当金は通常一年以内に支払われる見込みなので流動負債に計上されます。

賞与引当金は債務の確定とは関係なく計上されるものです。
そのため、賞与引当金は債務確定主義の例外的な取り扱いになっています。

コラム「債務確定主義とは」

賞与引当金の繰入と戻入の仕訳

それでは賞与引当金の仕訳を具体的に見ていきましょう。

期末時の仕訳

借方貸方
賞与引当金繰入額400,000賞与引当金400,000

賞与見積額60万円×4ヶ月/6ヶ月=40万円

※月次決算をしており毎月計上するのであれば、賞与見積額60万円×1ヶ月/6ヶ月=10万円となります。
※賞与の支給に伴い社会保険料の会社負担も発生するため、社会保険料についてもその金額を見積計上する必要があります。

賞与支払時の仕訳

借方貸方
賞与引当金400,000預金700,000
賞与300,000

賞与支払額は70万円であった。

賞与引当金繰入額の損益計算書における計上区分

賞与引当金を計上するには「賞与引当金繰入額」勘定を使うというのを見てきましたが、損益計算書上では一般的には「販売費及び一般管理費」に計上されます。
これは営業上の費用であるため営業費用に属するものだからです。

(財務諸表等規則98条((引当金繰入額の区分表示))
引当金繰入額は、その設定目的及び引当金繰入額であることを示す名称を付した科目をもつて別に掲記しなければならない。

賞与引当金の貸借対照表における計上区分

貸借対照表においては、賞与引当金は通常一年以内に支払われる見込みなので流動負債に計上されます。

(企業会計原則第三 四(二)B )
引当金のうち、退職給与引当金、特別修繕引当金のように、通常一年をこえて使用される見込のものは、固定負債に属するものとする。

M&A(Mergers and Acquisitions)の財務デューデリジェンス(財務DD)においては、財政状態及び経営成績が適切に表示されているかどうかを検討する必要があり、賞与引当金が適切に計上されていることを確認する必要があります。
賞与引当金繰入額の損益計算書における計上区分を検討することにより、正しい営業利益や経常利益を把握し本来の収益性を把握することもM&Aの財務DDにおいて大切です。

賞与引当金の税務処理

引当金とは、将来において特定の費用又は損失が発生することが見込まれる場合に、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として繰入れるとともに、貸借対照表の負債の部(または資産の部の評価勘定)に計上するものです。

会計上、計上すべき引当金は、企業会計原則「注解18」に定められており次の4要件が必要とされています。
1.将来の特定の費用または損失であること
2.発生が当期以前の事象に起因すること
3.発生の可能性が高いこと
4.金額を合理的に見積ることが可能であること

また、企業会計原則「注解18」においては、製品保証引当金、売上割戻引当金、返品調整引当金、賞与引当金、工事補償引当金、退職給与引当金、修繕引当金、特別修繕引当金、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金、貸倒引当金等がこれに該当するとされています。
このように、賞与引当金は債務の確定とは関係なく会計上計上されるものです。

税務上は債務確定主義が原則的な損金(必要経費)の計上基準となっており、その事業年度(年)に賞与引当金繰入額を計上した場合でも、債務の確定していないものはその事業年度(年)の損金(必要経費)になりません。

コラム「債務確定主義とは。法人税法と所得税法における要件。」

財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンス

賞与の支給見込みがあるにも関わらず賞与引当金が計上されていない財務諸表は、適正な期間損益計算がされておらず簿外債務(隠れ負債)が存在しており、悪く言えば粉飾決算と見られます。
M&Aの調査である財務デューデリジェンス(財務DD)においては、簿外負債(隠れ債務)はしっかりと検討しなければなりません。
財務デューデリジェンス(財務DD)は財務諸表監査の知識と経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼する方が安心です。
税理士法人MFMでは、どれだけ小さい案件のM&Aであっても四大監査法人出身の公認会計士がデューデリジェンス業務を監督しているため、安心してお任せ頂けます。
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