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架空売上とは

架空売上とは、実際には売上が無いにも関わらず財務諸表に計上されている売上のことを意味します。
売上の過大計上は、売上は存在しますが、実際の売上高よりも多く計上されている売上のことです。
押し込み販売は、まだ販売されいていない商品を無理やり販売することであり、将来買い戻すことが約束されていることもあります。
架空売上であっても売上の過大計上であっても押し込み販売であっても、本当は存在しない売上を計上するという点では同じであり、昔からある粉飾決算の典型的な手口の1つです。
営業マンが単独で行う事例もありますし、組織ぐるみで計画的に実行される事例もあります。

なぜ架空売上をするのか

営業ノルマの達成

営業マンは商品やサービスを売るのが仕事なので営業ノルマがあるのが通常です。
「月々の新規契約数」や「契約金額」などのように契約数や契約金額で定められることが多いでしょう。
営業ノルマを達成できたかどうかで、自身の昇給やボーナスや昇進に直接影響してきます。
そのため、営業マンが押し込み販売の手法により営業ノルマを達成したかのように見せようとすることがあります。
また、営業マン個人ではなく営業全体で押し込み販売や売上の過大計上をする事例もあります。

株主からの圧力

会社には様々な利害関係者(ステークホルダー)が存在します。
最も想像しやすいのは、上場会社の投資家である株主でしょう。
株主は会社に対して投資をしているため、常に利益を上げることを期待しており、上場会社の場合はその傾向が顕著です。
そのようなことから、業績予想を開示するのは義務ではありませんが、9割以上の上場会社で業績予想を開示しています。
容易に達成可能な業績を開示する訳にもいきませんし、ある程度の高い目標を持って作成されることでしょう。
そして、自ら開示した業績予想である以上、経営者はそれを達成しようと様々な方策を講じます。
しかし、その業績が達成できなかった時には、目標利益を達成したかのように見せるために粉飾決算が行われ架空売上や売上の過大計上がされてしまうことがあります。

銀行対策

中小企業では、銀行対策を行うために架空売上が計上されるケースがあります。
特に中小企業では、銀行の融資が下りなければ資金がショートしてしまい倒産してしまうことがあります。
銀行に対して、黒字で健全な会社ですということをアピールするために粉飾決算が行われ、架空売上や売上の過大計上がされてしまうことがあります。

最初の内は架空売上の計上で銀行融資を引っ張ってこれることがありますが、これ以上金融機関からの融資を受けれないとなった場合、M&A(Mergers and Acquisitions)で企業を売却することにより他社からの支援を受けようとするケースがあります。
ところがM&Aの「売り手」としては、都合の悪い情報は「買い手」に与えたくないと思うどころか、場合によっては隠そうとします。
逆に「買い手」は適正な(か、できるだけ安い)価額で買いたいのですが、「売り手」ほどの十分な情報を得ることはできません。
ここに大きな情報の格差が存在します。これを経済学の用語で「情報の非対称性」といいます。
そのため、M&Aにおいては適正な買収価格を算定するため、財務デューデリジェンス(財務DD)の実施がとても重要になってくるのです。
コラム「デューデリジェンスとは」
コラム「M&Aにおいてデューデリジェンスは必要なのか」
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架空売上の弊害

繰り返される架空売上

架空売上が計上されると財政状態や経営成績の見た目が良くなります。
しかし、架空売上は1事業年度だけ行われるというケースは少ないのが実情です。
架空売上の計上により目標利益を達成した場合、来期は更なる利益の獲得を要求されることとなり、ただでさえ達成していない利益をさらに上回る利益を上げなければならないことになります。
銀行対策であっても毎期継続して黒字にする必要があることから、架空売上の計上による粉飾決算が繰り返し行われてしまいます。
このように架空売上はどんどん大きくなっていき、隠しきれずにどこかで世間にバレてしまい大事件になるという事例もテレビで目にします。

資金繰りへの影響

架空計上が計上されると利益も計上されるので、法人税や消費税などの税金を必要以上に支払う必要があります。
業績に苦しんでいる企業は資金繰りも苦しいので、必要以上の税金を支払うこととなると、資金繰りがさらに厳しいものになってしまいます。
その資金繰りを改善するには銀行から追加融資が必要となり、そのためにさらに架空売上の計上による粉飾決算が行われるという流れになります。
このようにして架空売上の計上が何度も繰り返されてしまうのです。

売上債権の滞留

複式簿記では、貸方に売上高を計上した場合、借方に売掛金を計上する必要があります。
しかし、この売掛金は入金されることがなく滞留し続けることがあります。
架空売上の計上が繰り返されると、1年ずつで見るとそれ程大きな変化はないかもしれませんが、同業他社と比べると明らかに売上債権が大きく膨らみます。
そのため、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)においては、売上債権が同業他社と比べて多くないかや滞留の有無について調べることになります。
まずは、売上債権回転期間を分析することにより大きな視点で粉飾決算の有無を検討することができます。
コラム「財務デューデリジェンスと事前依頼資料」
コラム「売上債権回転期間の業種別適正水準と改善方法」

架空売上の手口

帳簿だけ計上する

もっとも簡単な手法は、帳簿上だけ架空売上を計上する方法です。
仕訳を計上するだけでよいので簡単にすることができます。
しかし、売上計上の根拠となる書類がないので、もし企業外部の第三者である監査人等のチェックは乗り越えることができません。

証憑書類を偽造する

企業外部の第三者のチェックを乗り越えるためには、書類を整えておく必要あります。
自ら書類を偽造・作成することにより、通常の取引と同様に外部から書類を受け取ったかのように書類を整えるのです。
巧妙な手口の場合、必要な証憑書類はすべて整っていることがあります。
しかしそれでも、入金はされないことから、当該取引先への確認をされると架空売上の計上がバレてしまいます。

グループ会社を使う

グループ会社を使って架空売上を計上する方法があります。
これも昔からある古典的な組織ぐるみの粉飾決算の手口でグループ会社間でグルグル回すことからグルグル回しや循環取引などと言われますが、一見すると書類は本物ですし入金もされるため、架空売上と判断するのは困難なことがあります。
しかし、どんどん利益を上乗せして取引がなされていくことから、どこかの会社では在庫が大きく膨れてしまいます。
そのため、M&Aの財務デューデリジェンス(財務DD)においては、在庫が同業他社と比べて多くないかや滞留の有無について調べることになります。
まずは、棚卸資産回転期間分析を行うことにより大きな視点で粉飾決算の有無を検討することができます。
コラム「経理担当者から見たM&Aのデューデリジェンスの流れと注意点」
コラム「棚卸資産回転期間の業種別適正水準と改善方法」
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架空売上による粉飾決算の発見方法

売掛金の残高確認を行う

確認とは、監査人が確認の相手先である第三者から文書による回答を直接入手する監査手続です。
企業内部で作成した書類は改ざんされているおそれがあることから、企業から独立した情報源に対して確認を行うことにより、より証明力が強い監査証拠を入手することができます。
先ほども述べましたが、この架空売上の売掛金は入金されることがなく滞留し続けることがあるため、売掛金の残高確認を行うことにより架空売上の計上が判明することがあります。

実地棚卸に立ち会う

グループ会社間でグルグル回し(循環取引)により架空売上が計上されている場合、売掛金の残高確認だけではその実態が掴めないことがあります。
ただし、どこかの会社で在庫が大きく膨れるため、異常または通例でない数値が検出され、不正による重要な虚偽表示リスクが識別されることがあります。
しかしながら、不正による重要な虚偽表示リスクが識別されたとしても、実地棚卸に立ち会わなけれれば在庫の実在性を確かめることができません。
そこで企業の行う実地棚卸に立ち会いテスト・カウントを実施することにより、棚卸資産の実在性を確かめるとともに、陳腐化品、破損品、又は老朽品も識別することができます。

期末日前後の取引を見る

架空売上は期末日前に行われる傾向があります。
そのため、期末日前に計上された異常に多額な利益や期末日前後の通例でない取引について、関連当事者との取引の可能性や資金移動の裏付けを調査することにより架空売上の計上が判明することがあります。

企業調査

上場会社が粉飾決算を行った場合、有価証券報告書の虚偽記載を行ったとして金融商品取引法違反となります(金融商品取引法197条)。
また、例えばそれが建設業であった場合、建設業法違反にもなり国土交通省が営業停止といった行政処分を出すこともあります。

税理士法人MFMでは、多くの情報のソースと調査のノウハウを生かしてM&Aの企業調査を行っています。以下のようなM&Aのリスクを調査することができます。

□会社の過去の行政処分の有無
□社長の過去の逮捕歴や前科の有無
□会社や社長が抱えている又は抱えていた訴訟の有無
□会社の所在地や役員の異常な異動の有無

M&Aの場面のみに限らず、これから取引をすることを検討されている方、ビジネスパートナーを組む予定の方、個人的な事情で依頼されたい方などもご利用頂けます。

※逮捕歴や訴訟に関する情報は、警察や裁判所が有しており一般的に公表している情報ではないため、調査することは基本的には不可能です。しかしながら、重大な犯罪事件や訴訟事件については、これまでの調査の実績から培った調査力により発見できる可能性があるのが税理士法人MFMの強みです。

世の中には怪しい会社やビジネス、不正・違法な行為により利益を得ている会社が意外と多く存在するものです。
例えば200万円支払って財務DDと法務DDを実施し、そのデューデリジェンスの結果として過去に行政処分を受けていたことが判明しM&Aを中止することとなった場合、その中止するという結論は出すために200万円のコストがかかってしまいます。
もし、会社が過去に行政処分を受けていたことが企業調査の実施によって判明した場合、おおよそ10分の1の料金で済みます。
デューデリジェンスを実施するかどうか悩まれている企業には、まずは買収対象会社の企業調査を実施することをおすすめしています。

税理士法人MFMのサービス「企業調査」
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財務デューデリジェンス・税務デューデリジェンス

M&Aの調査である財務デューデリジェンス(財務DD)は財務諸表監査の知識と経験があり、財務的なリスクを見抜ける能力に長けている公認会計士に依頼する方が安心です。
税務デューデリジェンス(税務DD)は税の専門家である税理士に依頼するのがよいでしょう。
税理士法人MFMではM&Aのデューデリジェンスの経験が豊富な公認会計士・税理士の有資格者によるデューデリジェンスを行っています。
どれだけ小さい案件のM&Aであっても四大監査法人出身の公認会計士がデューデリジェンス業務を監督しているため、安心してお任せ頂けます。
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