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建設業のROA(総資産利益率)

建設業の同業他社のROAを知りたいけれど知る方法がないと思われている方がおられるかもしれませんが、日本政策金融公庫が業種別経営指標というものを公表してくれており、その中に建設業の業種別の総資本経常利益率が記載されています。
ROAの計算方法については、コラム「ROA(総資産利益率)の業種別適正水準と改善方法」に記載しています。

建設業全体の総資本経常利益率の平均は表の一番上にある1.1%ですが、最も高い業種は「築炉工事業」で9.9%、最も低い業種は「特殊コンクリート工事業」で-9.2%となっています。

自社の決算書から計算したROAと比較することにより、自社のROAが高いのか低いのかを判断する目安になると思います。

また、M&A(Mergers and Acquisitions)の財務デューデリジェンス(財務DD)を行う場合、ROAを計算することにより、企業の収益性を見ることができます。
サービス案内「デューデリジェンス」

業種ROA
建設業1.1%
総合工事業0.3%
一般土木建築工事業0.4%
土木工事業(舗装工事業を除く)0.6%
土木工事業(造園工事業,しゅんせつ工事業を除く)0.6%
造園工事業0.5%
舗装工事業0.3%
建築工事業(木造建築工事業を除く)0.5%
木造建築工事業0.6%
建築リフォーム工事業-2.0%
職別工事業(設備工事業を除く)1.3%
大工工事業-2.3%
大工工事業(型枠大工工事業を除く)-3.9%
型枠大工工事業-0.9%
とび・土工・コンクリート工事業2.5%
とび工事業3.9%
土工・コンクリート工事業0.1%
特殊コンクリート工事業-9.2%
鉄骨・鉄筋工事業4.4%
鉄骨工事業4.1%
鉄筋工事業4.9%
石工・れんが・タイル・ブロック工事業-0.3%
石工工事業-4.7%
タイル工事業-1.5%
コンクリートブロック工事業7.4%
左官工事業6.4%
板金・金物工事業1.0%
金属製屋根工事業1.6%
板金工事業1.8%
建築金物工事業-0.7%
塗装工事業0.9%
塗装工事業(道路標示・区画線工事業を除く)0.9%
道路標示・区画線工事業4.0%
床・内装工事業0.9%
床工事業-0.2%
内装工事業0.9%
ガラス工事業3.1%
金属製建具工事業2.7%
木製建具工事業7.0%
屋根工事業(金属製屋根工事業を除く)-5.8%
防水工事業2.3%
はつり・解体工事業-0.5%
設備工事業2.2%
電気工事業3.5%
一般電気工事業4.0%
電気配線工事業1.6%
電気通信・信号装置工事業-3.7%
電気通信工事業(有線テレビジョン放送設備設置工事業を除く)-4.0%
有線テレビジョン放送設備設置工事業0.4%
信号装置工事業-3.3%
管工事業(さく井工事業を除く)2.2%
一般管工事業2.3%
冷暖房設備工事業3.4%
給排水・衛生設備工事業1.3%
機械器具設置工事業3.3%
機械器具設置工事業(昇降設備工事業を除く)3.1%
昇降設備工事業6.9%
築炉工事業9.9%
熱絶縁工事業7.5%
道路標識設置工事業4.6%
さく井工事業1.0%

(注)本コラムでは総資本経常利益率をROAとしています。
出典:日本政策金融公庫「業種別経営指標」(2017年10月公表)

ROA(総資産利益率)の改善方法

ROAを改善するには、分子である利益を改善する(増やす)か、分母である総資産を改善する(減らす)必要があります。

利益を改善する

付加価値の高い商品・サービスを提供することができれば利益が増加しますが、簡単に高付加価値のビジネスモデルを構築できれば事業経営で苦労することはありません。
ただし、新事業分野への進出等の新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等であれば、事業再構築補助金を受給することにより、付加価値の高い事業分野にシフトして利益を改善させることができます。

補助金額補助率
中小企業(通常枠)100万円以上6,000万円以下2/3
中小企業(卒業枠)※16,000万円超~1億円以下2/3
中堅企業(通常枠)100万円以上8,000万円以下1/2(4,000万円超は1/3)
中堅企業(グローバルV字回復枠)※28,000万円超~1億円以下1/2

サービス案内「事業再構築補助金」

売上高を増やして収益を増加させるのが難しいのであれば、費用である支出を抑えるしかありません。
小さな支出から1つ1つ見直しコストを低下させる必要があります。

総資産を改善する

無駄な資産を圧縮すれば総資産を減らすことができます。
同業他社と比べて在庫が多いようであれば在庫を減らすことができないかを検討する必要があります。
その際には、棚卸資産回転期間の分析が有効です。
コラム「棚卸資産回転期間の業種別適正水準と改善方法」
また、同業他社と比べて売掛金や受取手形が多いようであれば売上債権を減らすことができないかの検討が必要でしょう。
その際には、売上債権回転期間の分析が有効です。
コラム「売上債権回転期間の業種別適正水準と改善方法」
その他にも、遊休資産を売却するなど様々な資産圧縮により獲得した資金で借入金を返済すれば総資産を減少させることができます。

税理士法人MFM